桑田真澄氏「電撃入閣」で期待されるヤングG投の〝Matt化〟

投手チーフコーチ補佐に就任した桑田氏(球団提供)

原巨人に強力な頭脳が加わった。巨人は球団OBの桑田真澄氏(52)が投手チーフコーチ補佐に就任すると12日に正式発表した。初入閣となるレジェンド右腕は、さっそく新たな育成方針を示すなど意欲十分だ。そんななか、芸能界で異彩を放つ次男でタレントのMatt(26)を育て上げた桑田氏の〝教育術〟も注目されつつあり、若き投手陣の底上げが期待されている。

新年早々、伝統球団に新風が吹き込んだ。会見に同席した原辰徳監督(62)によると、桑田氏の入閣を宮本投手チーフコーチに相談した後、昨年12月28日に山口オーナーへ打診。球団トップの承諾を得た上で年明けの5日に桑田氏に直接思いをぶつけ、15年ぶりに古巣のユニホームに袖を通すことが決まった。

白羽の矢を立てた原監督が「キャリアはもちろんですけども、ユニホームを脱いでからもいろんな勉強をしている」としたように、桑田氏は現役引退後も評論活動を行い、早大大学院などで投球動作を研究。卓越した投球理論に加え、かつての根性論だけに縛られない柔軟な発想で後進育成に尽力する構えだ。

桑田氏は「我々の時代は『たくさん走って、たくさん投げろ』という時代だったと思うんですね。でも、今の時代はテクノロジーの進化で自分が投げているフォームをすぐにコマ送りで見られる時代なので、自分の感覚とかイメージ、それと実際の動きが一致するというのはすごく大事だと思っていまして。そういった指導をして、一人でも多くの選手が活躍してくれることを祈っています」と所信表明した。

常勝軍団を築く上で、日本人投手陣の底上げは欠かせない。昨季、14勝を挙げたエース菅野の次点は9勝の戸郷で、以下は田口と今村(5勝)、畠(4勝)と続く。こうした若手が台頭しないことには再び補強に頼らざるを得ず、桑田氏がもたらす〝エキス〟がどんな化学反応をもたらすのか大いに注目されるところだ。

また、桑田氏が持つ〝人間力〟にも期待が集まっている。球界関係者は「桑田さんは、Mattさんを厳しくしかることなく育て、自分がやると決めたことに『周りの評価は気にするな』と教育してきたそうです。その結果、Mattさんは自分を貫いて芸能界でしっかりと自己表現している。親子間での教育ですが、コーチにとって選手は子供と同じ。20歳そこそこの選手も多い。そうした教育も若い選手たちの指導に生きてくるのではないか」とみている。

時代の変遷とともに、かつての「詰め込み教育」が廃され「ゆとり世代」から「さとり世代」へ移行している。そのため多くの首脳陣が世代間ギャップに直面し、いかに選手に伝え、理解させるかに頭を悩ませている。その点、桑田氏が時流に合わせながら施してきた〝Matt教育〟はヤングGたちを飛躍させる一助になるのでは…というわけだ。

背番号は桑田氏が「恩師」と語る藤田元司監督(故人)がつけた「73」に決まった。「藤田さんに恥じないように、指導者としてエースになれるように頑張っていきたい」。レジェンドOBの電撃入閣でリーグ3連覇、そして9年ぶりの日本一奪回なるか――。

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