大ちゃんワールド炸裂だ。フィギュアスケートのアイスダンスで活躍する高橋大輔(34=関大KFSC)が競技と並行して取り組んできたリノベーション(建物改修)の部屋が完成。氷上での独創的な表現力をほうふつとさせる奇抜なデザインを初披露した。氷上でも建築でも我流の世界観で魅了する大ちゃんは本紙の単独インタビューに応じ、表現者の「哲学」を激白。さらに〝建築家スケーター〟としての10年後の未来像も語り尽くした。
――ここまで奇抜な部屋は見たことがない
高橋 ありがとうございます! 今回は「好きにやっていいですか?」って聞いたら「ぜひ!」と言われたので、かなり攻めました(笑い)。特に力を入れたのは色。天井と壁が青、床がピンク。完成した部屋に恐る恐る入ったけど、意外と圧迫感はなかった。今回の挑戦でまだまだ攻められる!って可能性を感じました。
――ズバリ、部屋のネーミングは
高橋 何ですかねえ。難しいなあ。そうだ! 現代版「青の洞窟」ってどうですか? なかなか味わえない雰囲気なので。実際、夕方くらいに部屋に入ると、ホントに洞窟感が強い。住んだ方はどう感じるのか(笑い)。
――こだわった点は
高橋 大きい部分だとシャワーブース。あえて浴槽をなくし、最新のシャワーユニットを入れてもらいました。細かいところでは曲線を使いたくなかったので、ドアノブやタオルかけも四角くてストレート。なかなか見つからなかったので、後半まで悩みました。
――スケートとリノベの「表現」の共通点は
高橋 正反対かもしれません。スケートは「受け身」で、リノベは「攻め」と感じます。僕はスケートではその時に感じたままを表現する。自分を出し過ぎると、全て同じ「僕」になってしまうのが嫌なんです。振付師さんに作ってもらった世界観に乗っかり、自分は周りからどう感じられているかを考え、それを出す。その方が新しい自分が生まれる気がするんです。逆にリノベでは自分を出し、どう受け入れられるかが楽しみです。
――今回の部屋をスケートで表すと
高橋 引退後のエキシビション、ショーナンバーという感じでしょうか。とにかく自分がやりたいことをやって攻める。
――没頭した時はどんな感覚なのか
高橋 シングルの時は視野がすごく広くなるんです。普段は周囲のお客さんが景色に見えるんですが、メチャクチャ入り込むと観客の一人ひとりの顔がクリアに見え、自分のエッジの音も聞こえる。ジャッジの人の動きなども細く見えるんです。全てがうまくハマった時にしかならない感覚なんですが。
――アイスダンスでは
高橋 それが逆なんです。いい時はかなちゃん(村元哉中)の顔だけにピントが合って、周りがボヤける感じ。でも、周囲の雰囲気は感じ取れる状態です。このゾーンに入ったらいい演技ができる。まだ100%ではないですが、全日本選手権のリズムダンスがそれに近い感覚でした。
――高橋さんはスケーターであり芸術家。学生時代の美術の成績は
高橋 昔から図工などが好きだったので、美術は5段階で「4」はあったかな。音楽も好きだったので、5教科以外の方が成績は良かったし、授業もウキウキしていました。でも、絵は下手くそですよ。もっと勉強しておけば良かったです。
――次なる挑戦は
高橋 いっぱいあります。かなうなら、まず一軒家に挑戦してみたい。そして3LDKのマンションやお店の内装とか。もっと大きな夢だと、将来的には小さなビルを1棟買って、部屋から屋上まで全部デザインしてみたい。お金があれば…ですけどね(笑い)。
――10年後の自分は
高橋 44歳ですか…。微妙ですけど、まだ滑っていたいですね。エンターテインメントの舞台で、一人の役者として世界観を作りたい。50歳になってもそういう身近な場所があればいいなって思います。あとは経験と勉強を重ね、指導者という選択をするかもしれません。とにかく幅広く活躍し、いつも忙しくしていたいです。今回にしても周りの方に恵まれました。だから、そういった「縁」は大事にしていこうって思っています。
【異色かつハイレベルな〝二刀流〟】現役スポーツ選手がここまで本格的に建築のカテゴリーで活躍するのは異例だ。
もともと「家の間取りを見るのが大好き」という高橋は自宅改装の経験もあり、19年1月にマンション経営のパイオニア「スカイコート株式会社」とのコラボで13階建てマンション(東京・浅草)を1棟丸ごとデザイン。販売開始から申し込みが殺到する人気だった。
そして今回は「D―colorプロジェクト」第2弾のリノベーション企画だ。アイスダンスに転向した昨年、パートナーの村元哉中(27=関大KFSC)と米フロリダでの練習の合間を縫い、リモートで会議を重ねながら約1年かけて練り上げた。異色の〝二刀流〟だが、高橋は「むしろスケートのストレスを忘れさせてくれ、いい息抜きになりました」とプラスにとらえている。
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