障害者の門出の場

 コロナ禍に終わりが見えない中、障害者の親たちが「中止にならずによかった」と口をそろえたイベントがある。5月に延期された長崎市心身障害者団体連合会主催の成人式▲別に障害者が各市町主催の式典に出席できないわけではない。だが、中には、長く座っていられない、奇声を発する、介助が必要-という人もいる。「うちの子は迷惑をかける」と一歩引いてしまう保護者もいる▲昨年の同連合会の式典出席者は37人。小規模ながら、心温まる空間だった。「この子は長く生きられないのでは」という不安を抱えてきた両親、周囲の心ない言葉に苦しんだ経験がある家族らからは「ここまで成長してくれてありがとう」というメッセージが送られた▲11日付の本紙に、成人式を迎えた長崎市のダウン症の女性と家族の話が載った。「娘を産んでよかった」。地域や学校、ダウン症の家族らでつくる「バンビの会」などに支えられてきた母親の言葉は、重く、すがすがしかった▲そんな障害者を対象にした自治体主催の成人式は、全国的に見ても少ない。だからこそ、同連合会が開いているような式典は、家族らも気持ち良く出席できる大切な場所となっている▲延期の判断を喜ぶとともに、社会的弱者を考慮した場がもっと増えてくれれば、と切に願っている。(城)

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