【京成杯】グラティアスが2億円超の輝きで初重賞制覇 ルメール「楽勝でした」

好位から上がり最速で後続を突き放したルメール=グラティアス(左)

中山競馬場で行われた3歳重賞のGⅢ京成杯(芝内2000メートル)は、1番人気に支持されたグラティアス(牡・加藤征)が後続に2馬身半差の圧勝。一昨年のセレクトセールで高額取引(2億3000万円で落札)されたのはダテではなかった。レースを振り返るとともに今後の可能性を探る。

デビュー戦だった東京芝2000メートルの前走とは違って、若干スタートで後手に回ったグラティアス。もしも互角に切っていたら…先行した1、2番枠のさらに外を回ることになっていたかもしれない。好スタートを切ったヴァイスメテオール(4着)のポジションだ。その結果、最後の急坂で外を回らされたツケが回ってきたかもしれない。

そんな空想を一瞬はしてみたが、やはりそれでも勝っていただろう。どう乗っていても勝っていた、と思わすほどの突出した強さだった。

「今日は馬にとっていい勉強になりましたね。馬の後ろで我慢できたし、リラックスしていたし、直線では能力を見せてくれました。跳びが大きいけど、すぐにトップスピードに入りました」

新馬戦に続いて手綱を取ったルメールが語ったように、まさに非の打ちどころのないレースぶりだった。

初戦のような先行策を打てなかったことが結果的に奏功。馬混みでも集中力を切らさず、そしてまた好位差しのスタイルが可能なことも証明した。これは今後、大きな舞台で活躍するために必須のアイテムだ。

もっとも、わずか2戦目でこれほどまでの完全無欠なレースぶりを披露できたのは陣営の優れた調整能力のたまもの。

管理する加藤征調教師は「初戦は物見をしていたけど、調教ではそんなそぶりを見せない。今回に関しては2戦目で冷静に走れるかが課題だったが、1コーナーで〝ああ、いい目つきで走っているな〟と安心した。(10キロの)馬体増は中身が入ってきた証拠だし、タフな芝も苦にしなかった」と馬場不問も示唆した。

前半5ハロン通過が63秒7。超スローペースのため勝ち時計こそ平凡ながら、上がり3ハロンはメンバー最速の34秒9。「楽勝でした」と鞍上自ら言い放ったように、GⅢではまさに役者が違った感じだ。

「今後のローテはこれから」と同師。クラシック戦線への挑み方は未定ながら、グラティアスの非凡な才能だけは確定している。

終日、寒風吹きすさぶ中山競馬場だったが、昨年暮れのGⅠホープフルSを勝ったダノンザキッドと対決する春が、そこでの熱戦が迫りつつあることを感じさせた一戦であった。

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