【サンデー美術館】 No.273 「『雲谷派の花鳥図』展」

▲《花鳥図》(部分) 17世紀 雲谷等哲(1631-83)

 「お前たち、普段はどこにいるんだっけ?」

 昨年末、78歳で亡くなった国民的コメディアンの小松政夫さんによると「チュチュンがチュン」と鳴きながら、〈三羽の雀〉で集まって、「電線」で過ごしているらしい。

 その後、雀は猟師に撃たれ、焼かれた挙句に食されるという、あのハチャメチャな「電線音頭」の一節である。なぜにああも流行ったんだろう。かくいう私も、ひたすら歌い踊った一人。

 45年前のお話である。

 では、350年前はどうだったのか。江戸初期の絵師、等哲先生いわく〈三羽の雀〉とは、竹の枝にとまっては跳ね回る愛すべき輩であるとのこと。確かに、そんなにくっついて同じ枝にとまったら、しなるわ揺れるわで大事だろうにお構いなし。虫を咥えた子雀は喜び勇んで逆上がりまで披露する始末である。

 初夏の朝まだき、雀たちの大騒ぎに目を覚ました先生。庭の一隅にひとときの涼を見いだしたに違いない。朝顔の揺れる青が沁みる一点である。

山口県立美術館副館長 河野 通孝

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