39歳 阪神・糸井が目指す土俵際からの再復活 「獣の叫び声」あげクビ回避した過去

レギュラー再奪取を狙う阪神・糸井

不死鳥伝説再び――。チーム最年長の阪神・糸井嘉男外野手(39)がレギュラー再奪取に燃えている。

4年契約最終年となった昨季は右ヒザのコンディション不良などもあり86試合の出場で打率2割6分8厘にどどまった。2本塁打、28打点と〝らしくない〟数字が並び、オフにはそれまでの推定年俸4億円から53%減の屈辱も味わっただけに、18年目の今季は〝背水〟の覚悟で臨む。

糸井には土俵際で凡人には到底〝無茶な〟レベルで踏ん張ってきた。崖っぷち神話の始まりは、投手から打者に転向した日本ハム時代の2006年。高田繁GMから「2年やる。それでダメならお前はクビだ」と宣告された。そして転向から2年目、後がなくなった糸井は、二軍公式戦が終わると寮のある千葉・鎌ケ谷の室内練習場で大村巌二軍打撃コーチに見守られながら、夜更けまでバットを振り続けていたという。

当時を知る関係者によると「それにつき合った大村コーチも凄かった」ようで、糸井が音を上げそうになると「お前、じゃあ今年でクビだな。俺は構わないぞ。お前、クビか?」と容赦ない〝禁断の二文字〟を連呼。これに糸井も「無理、絶対に嫌です!」と言い、打撃マシン相手に、絶叫しながらバットを振ったこともあったという。

2人の真剣勝負で発せられる声は隣接する球団寮まで響き渡り、冗談交じりに「はっきり言って獣の叫び声、奇声だよ。近所迷惑レベル」と語られたほど。練習が夜明けまで及び、翌日の二軍戦に同じユニホームのズボンのまま出場したこともあったそうだ。〝地獄〟を味わった先に現在の糸井があるのは言うまでもない。

7月31日で40歳。ダメなら否応なしに「引退」の2文字がちらつくことになるが、置かれた立場は本人も理解している。「チーム内での競争はあるものだし、そういう世界。やるだけだと思っています」。既に勝負は始まっている。

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