驚きの投票率1.52%から幻の「100%」まで?!いろんな投票率のお話(国政選挙&最高裁判所裁判官の国民審査)

投票率はしばしば話題になります。有権者の政治的関心を示すものとして話題になることもありますし、投票率の高低によって組織票の影響力の強弱を議論することもあります。そして、日本の選挙管理委員会はしばしば投票に行こうと呼びかけて投票率アップを目標としています。今回は投票率に関する話をします。

photo by shutterstock.

国政選挙の投票率の推移

国政選挙の投票率推移(筆者作成)

図は日本国憲法施行後から現在までの国政選挙(衆議院選、参議院選)の投票率の推移です。投票率は投票日当日の天気などに影響されることが多いものの、昔と現在を比較すると投票率が下がっている傾向は見られます。ただ、最近の選挙でも国民の関心が高まっているときの投票率は高く、2005年の郵政民営化をめぐって行われたいわゆる郵政解散による衆議院選では67.51%、2009年の自民党から民主党へ政権交代が行われた衆議院選では69.28%という高投票率を記録しています。

投票率1.52%の自治体も!最高裁判所裁判官の国民審査

最高裁判所の裁判官は国民の審査を受けます。衆議院選に合わせてこの国民審査は行われますが、衆議院選と比べると国民の関心は低いものとなっています。沖縄県では国民審査の投票率が衆議院選と比べて顕著に低くなる傾向があり、2017年に行われたときは衆議院選の投票率が小選挙区56.38%、比例区56.33%に対して、国民審査は50.16%と5ポイント以上低くなっています。また、2015年は小選挙区52.36%、比例区52.32%に対し、国民審査は42.25%となんと10ポイント以上も低くなっています。この2015年の国民審査において、沖縄県では9自治体で10%未満の投票率を記録し、伊江村では衆議院選は50%以上の投票率を記録しているにもかかわらず、国民審査は1.52%と信じられないような低投票率を記録しています。また、北大東村では衆議院選は75%以上という高投票率の一方、国民審査はわずか3.60%という低投票率を記録しています。2017年になって、この低投票率はある程度改善されたとはいえ、それでも沖縄県では国民審査の投票率10%未満の自治体は2自治体存在し、最低投票率の多良間村では3.69%を記録としています。

投票率「100%」?!その秘密は……?

投票率100%――これは投票に行こうと呼びかけている選挙管理委員会などからすれば夢の数値です。岐阜県の根尾村(現在は本巣市の一部)の有権者60人ほどのある投票区では1958年の岐阜県知事選や1959年の県議会選、村長選、村議会選でなんと投票率100%を記録していました。
何度も投票率100%という、この地区は投票に行こうと呼びかけるような人々からすればまさにお手本のような地区でした。しかし、これをお手本とは感じていなかった組織がありました。それは警察です。この地区には出稼ぎの人や病気の人がいるにもかかわらず、投票率が100%を記録したことはおかしいと村長選と村議会選の後に捜査に乗り出したのです。
警察の捜査の結果、この1959年の村長選と村議会選において、ある候補を推していた投票用紙交付係が立場を悪用して棄権した17人分の投票用紙を別の人に渡して替玉投票をさせたことが発覚しました。さらにはこの地区では別の候補を推していた投票の立会人が投票終了後に投票箱を開けて5枚の投票用紙を書き換えるといった信じられない事件も発覚しています。

© 選挙ドットコム株式会社