フェイクバーガー、引越しワッパー、大豆肉バーガー…バーガーキングの企画がバズるワケ

ハンバーガーチェーン「バーガーキング」は12月、期間限定となる新商品「プラントベースワッパー」を新発売しました。牛肉ではない大豆由来の100%植物性パティを使用したバーガーで、発売されるや否やネットでも話題になっています。

バーガーキングと言えば、ここのところ見た目よりも味で勝負した「アグリーバーガー」シリーズや正体不明の「ザ・フェイク・バーガー」、そしてバーガーキングの近所の物件を探せる物件情報サイト「BK TOWN ROOM」など、他のハンバーガーチェーンとは一線を画す企画力で勝負しています。

そうした攻め企画の先にある狙いとは一体何なのでしょうか。12月に行われたプレス向け試食会を取材しました。


コロナ禍でも売上好調

1954年にアメリカのフロリダ州に誕生したバーガーキング。ハンバーガーをカスタマイズして提供するアイデアを展開し、今では世界で2番目に大きなハンバーガーチェーンとなっています。

1993年に日本に初進出すると、その後は何度か撤退と再進出を繰り返して今に至ります。2020年12月1日現在で日本国内に102店舗、12月中には新たに9店舗の出店が控えるなど、他者のハンバーガーチェーンと比べると小さな規模ながら着実にサービスを拡大しています。

2020年はコロナ禍を追い風とし、売上は2020年11月単月で既存店ベース前年比13.2%増、全店ベース前年比22.5%増。年間売上推移も既存店ベース3.8%増、全店ベース22.8%増と好調。新規出店数は全国で25店舗にも及び、2021年以降もすでに全国41店舗の新規出店が計画されているそう。現在はコロナの影響もあり、都心ではなく都心郊外や地方への出店が続いています。

Twitterの声を企画に反映する

ブランドマネージャーの麦敏光さんによると、バーガーキングではTwitterを毎日チェックし、リアルな客層の声を反映して企画に落とし込んでいると言います。2020年はそのようにして新たな新商品やキャンペーン、プロモーションを次々と展開してきました。

ブランドマネージャーの麦敏光さん

冒頭で挙げた企画以外にもバーガーキングの最大ボリュームを誇る「デラックスワッパー」シリーズ、総カロリー2000kcalを超えるマキシマム超ワンパウンドビーフバーガーを食べ放題で食べられるイベント「マキシマム・ザ・チャレンジ」など、いずれもネットとの親和性が高く、話題を集めやすいものばかり。

そして、新発売されたのが「プラントベースワッパー」です。今回もまた話題集めの企画かと思いきや、実はそうではないようです。

各社が挑戦する代替肉パティ

大豆などの代替肉を商品化するハンバーガーチェーンとしては、バーガーキングは先駆けではありません。モスバーガーではすでに2020年5月に「MOS PLANT-BASED GREEN BURGER<グリーンバーガー>」を、ロッテリアでも7月に「ソイ野菜ハンバーガー」と「ソイ野菜チーズバーガー」を発売しています。

しかし新商品開発マネージャーの荒川波奈絵さんによると、そうした他のハンバーガーチェーンとは一線を画しているのが今回の「プラントベースワッパー」だと言います。改めてバーガーキングのワッパーの魅力を伝えるための商品を考案したそう。

厳選された大豆由来の100%植物性パティを直火焼き製法で丁寧に焼き上げ、本格バーガーらしい味わいを実現。あくまで「美味しい大豆肉」ではなく「美味しいお肉」として提供しています。

お肉と違いが分からないくらいのクオリティ

実際に試食会でバーガーキングの看板メニュー「クラシックワッパー」と「プラントベースワッパー」を食べ比べてみました。パティ以外はすべて同じ材料です。

パティ以外は同じ材料を使用

どちらも直火焼きならではのジューシーでスモーキーなお肉の味が堪能でき、正直なところ、両方とも美味しいハンバーガーを食べているようにしか思えませんでした。強いて言えば「プラントベースワッパー」の方は食感が少しだけかたさを感じますが、パサパサ感ではなくしっかり焼いたお肉のかたさという感じ。そして本当に大豆の香りはゼロ。大袈裟ではなく、言われなければ大豆肉だとはわからないクオリティでした。

リアルフードと味に自信があるから攻められる

オーダー後に作り始め、適正温度でどこから食べても味や食材が同じになるように設計、合成着色料や化学調味料を一切使わないなど、ファストフードでありながらもリアルフードに強いこだわりを持っているバーガーキング。ケチャップとマヨネーズというシンプルな味付けも、そもそもの味に自信があるからだと荒川さんは語ります。

「植物肉の市場そのものがどこも成功してはいないのが現状です。我々としては普段食べているワッパーと同じクオリティのパティが完成したため、満を持して発売しました。2番手、3番手になったのではなく、いよいよ味にこだわるバーガーキングが参入したという認識です」(麦さん)

バーガーキングの近所に住めるサイト

バーガーキングの近所の物件を探せる物件情報サイト「BK TOWN ROOM」も、「この商品食べたいけど、近所にバーガーキングがない」という声がTwitter上の一般ユーザーから多かったことから企画を立案したそう。期間中に部屋を契約した人には、抽選で10人にワッパー 100食分のクーポンをプレゼントする「引っ越しワッパー100食分プレゼントキャンペーン」も開催しました。

「どんなに攻めていても、最終的には直火焼きが美味しい、ワッパーが美味しいという着地点に落とし込むというのはすべての企画の共通した狙いです。我々は日々Twitterでエゴサーチをし、社内のチャットでTwitter上の反応を共有しています。公式アカウントとしてお客様に直接DMを送ることもあり、リアル店舗で実際にコミュニケーションするのと同じ感覚ですね」(麦さん)。

リアルフードと味に対するこだわり、そしてお客さんとの密なコミュニケーション。バーガーキングの攻め続ける企画の裏には、そうした確固たる自信と狙いがありました。

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