10%の家賃カットも可能?大家の“弱み”をつく「賃貸の値下げ」交渉術

家賃は、借主貸主相互の合意によって定められています。言い換えると、借主が大家に値下げを提案して、大家が合意すれば家賃は下がるものなのです。現役大家である広之内友輝が「アパート・マンションの家賃値下げ交渉術」という、ある意味、自らの首を絞めてしまうような方法を解説します。


募集家賃が下がっていることは、よくある

家賃交渉のタイミングは、基本的に賃貸借契約の更新時です。しかし、賃貸借契約更新の機会が来たからといって、管理会社に開口一番「家賃下げてください」などといっても先行きは暗いでしょう。「厳しいと思いますね」「みなさん現状の家賃で更新お願いしているのですが…」などと、管理会社から言われておしまいです。

管理会社は基本的に、大家さん(貸主)にメシを食わせてもらっています。残念ながら心情的には、そこまで借主側ではありません。借主であるあなたに不利な環境で、根拠も持たずにただお願いするのは、ただのおねだり。たたかうには“根拠”という武器が必要です。

その根拠たりうるのは、 “最新の募集家賃”です。これこそ、大家さんの弱み、現状の入居者に最も知られたくない情報の一つです。

アパート投資が盛んな地域では、アパート同士の価格競争により入居募集家賃が下がっていることがあるのです。例えばあなたの家賃が現状5万円でも、新規の入居募集では4万5,000円前後で募集していることはよくあります。

あなたが長期間入居している場合、「あなたの家賃だけが高かった」ということもありうるのです。新築時から入居している場合、現状の募集家賃がかなり下がっている確率は高いです。

こうした状況を把握できれば、次の賃貸借契約更新の際、「今このアパート〇万円で募集していますよね。私も〇万円に家賃下げていただけますでしょうか」と、交渉するのです。簡単にいうと、「新しい入居者だけ優遇して、ずるい」と暗に示して、交渉するべきということです。

大家の立場から言うと、「たしかに、長く住んでくれている“ありがたいお客様”である、あなたの方が高いのはおかしいですよね」ということになります。

アパートの募集家賃は、最近ではネットで簡単に調べることができます。アットホーム、スーモなどの住宅系サイト、アパマンショップなどの賃貸系サイト、不動産連合隊などの投資系サイトなど、いたるところで賃貸募集を行っています。

サイトでわからない場合は、近くの不動産会社を訪ねたり、電話をしてもいいと思います。もちろん「家賃交渉するので、○○アパートの家賃教えてください」と、ストレートに聞いてはいけません。「〇〇アパートの入居検討しているのですが、家賃おいくらですか?」などと、入居検討者を装って尋ねてください。

空室率2割以上だと、成功の確率はさらに上がる

募集家賃の裏付けが取れたら、いよいよ家賃交渉です。家賃交渉は契約更新に係る連絡を管理会社から受けた際、値下げを申し入れてください。家賃交渉に慣れていない方は、ご心配の向きもあるかもしれません。しかし、交渉はタダです。断られても、家賃がそのままなだけです。リスク0の交渉ですので気負わず申し込んでください。

「ちょっと厳しいとは思いますが…」などと管理会社に言われても、気にせず申し入れてみてください。最終的には大家が決めることです。交渉の成否は大家次第ですが、空室が多い(目安は空室率が2割以上)アパートは、大家が「交渉断って、これ以上退去されても困るかな…」と、交渉に応じる場合が多いと感じています。ちなみに私の場合、家賃交渉が入った際、妥当な金額であればうけるようにしています。

もし、あなたの家賃が5万円なら、あなたは大家にとって2年契約で120万円もの大金を支払ってくれている“お得意様”です。現状の募集家賃の調べをつけたうえで、価格が下がっていたならば、堂々と更新時に価格交渉を行うことをお勧めいたします。もちろん私は大家であるので、本当は行って欲しくはないのですが…。

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