内閣不支持層ほど東京オリンピック・パラリンピックを「中止すべき」と回答 1月の選挙ドットコムリサーチ詳細解説

はじめに―世論調査を「解釈」するための注意点

世論調査を解釈する上で、読者の皆さんに気をつけていただきたいことがあります。本稿では(というか、今後、私が執筆する世論調査の分析記事においては)、「有意な差がある/ない」という表現を多用します。学術論文ではないので、詳しい説明は省きますが、これは「カイ二乗検定」という統計的手法を用いて、調査における差が統計的に意味のあるものなのか、ないものなのかを示す表現です。

なぜこんな話をするかというと、こと世論調査などの数字を見慣れていない方は、どうしてもある項目について、いずれかの項目の比率が少しでも高いと、それをそのまま母集団の比率と判断してしまいがちです。しかしながら、統計はあくまで統計。サンプルにおける標本比率が、そのまま母集団の比率を表すものではありません。ですから、特に標本比率が小差である場合には、その差が意味のあるものなのか、ないものなのかを検定し、意味のない差には意味がない、と言える素養が必要です。これから分析を眺めていくわけですが、統計によってわかることもわからないこともあります。特にわからない点については、早合点しないこと。これが世論調査の解釈においては、とても重要です。

支持政党―「若年層全体としては『政治的に透明化』している」

まず、支持政党についてみてみます。速報でもお伝えしている通り、最も多い回答は、電話調査・ネット調査とも「支持なし」で、次いで「自民党」です。年代別にみると、「自民党」の支持率は60~80代以上で3割前後を占めますが、18歳~40代ではいずれも2割未満であり、両者には有意な差があります。対応して若年層ほど多くなるのが「支持なし」です。

なお、若年層ほど支持率が低いのは自民党だけでなく、他の政党も同様であり、全体として、若年層ほど無党派層が多く、高年齢層ほど政党支持層が多いという傾向が読み取れます。この傾向は菅内閣の支持においても似ており、若年層ほど「どちらとも言えない」が多く、高年齢層ほど支持/不支持にかかわらず積極層(強く支持/全く支持せず)が多くなります。若者の保守化が叫ばれて久しいところですが、こうした調査に基づけば、むしろ若年層全体としては政治的に透明化している、といった方が正しそうです。

東京オリンピック・パラリンピック―内閣不支持層ほど「中止するべき」という考え

次に東京オリンピックパラリンピックについてです。英タイムズ紙は現地時間21日、日本政府が、新型コロナウイルス感染症のため非公式に中止せざるをえないと結論づけたなどと報じています。これに対し日本政府は22日、「そのような事実は全くない」と否定するコメントを発表するなど、さまざまな憶測が飛び交う中で開催できるかがいまだ不透明な状況にあります。調査では「中止するべきだ」が30代以上の年代では多数を占めました。20代では「中止するべきだ」と「どちらとも言えない、わからない」が並び、18・19歳では「再度、延期して開催するべきだ」が多数となっていますが、いずれも全体に対する有意な差は認められず、年代によって考え方に差があるとはいえません。他方、内閣支持でみると、「中止するべきだ」が支持層より不支持層で有意に多く、内閣不支持層ほどオリパラ中止を求めていることがわかります。衆議院の解散がオリパラ日程後となった場合、その成否が選挙結果に大きく影響するとされていますが、調査の結果はこうした仮説を裏付けている側面があるといえそうです。

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種―全年代的に「受けたい」が多数。ただし「早期に」は少数派

次に新型コロナのワクチン接種に関する設問です。毎日新聞などが1月20日に「新型コロナワクチン、6割超『受けたくない』 女子高生100人にアンケート」というオリコンニュースの記事を掲載しTwitterなどで問題となりましたが、調査ではいずれの年代でも「しばらく様子を見てから受けたい」が過半数を占め、若年層でも有意な差は特にみられませんでした。なお、オリコンニュースの調査の設問は「『早期に』接種を受けたい」かどうかを聞いたものであり、タイトルの「6割超『受けたくない』」には「早期に」という前置きが本来は必要です。選挙ドットコムの調査の選択肢にも「できるだけ早く受けたい」がありますが、こちらの選択肢は80代以上を除いていずれの年代でも3割を超えていません。そもそも選択肢が異なる以上、単純な調査の比較は困難ですが、簡潔に要約すれば、ワクチンの接種自体は受けたい人が多数を占めるが、早期に受けたい人は少数であり、この傾向に年代による有意な差があるとはいえない、と推察されます。

飲食店を中心とした時短要請―更なる対策を求める声も

飲食店を中心とした時短要請についてです。速報では、電話・ネットとも最も多かった回答は「不十分だと思う」でしたが、全年代においてこの傾向は変わりません。

ただし、支持政党別にみると「自民党」支持層では「適切だと思う」が最多となり、さらに内閣支持でみると「強く支持する」層は過半数が「適切だと思う」と回答するなど、内閣支持や与党支持と時短要請への評価には相関があります。ただ、いずれの切り口でみても「不十分だと思う」の比率は一定程度を占めており、さらなる対策を求める声は少なくなさそうです。ただ「不十分」とはいっても、取りうる政策の方向性は多様であることから、さらに踏み込んでどのような対策を取るべきかについては、調査からはわかりません。いずれにせよ、難しい舵取りを迫られることになりそうな結果です。

トランプ前アメリカ大統領のTwitter凍結―保守層ほどTwitter社の対応を問題視する傾向でも大勢は占めず

アメリカのトランプ前大統領のTwitterアカウントが凍結されたことに対する受け止めです。こちらも速報でもお伝えしている通り、最も多かった回答は、電話では「適切な対応だ」、ネットは「どちらとも言えない、わからない」でしたが、ネットでは「どちらとも言えない」「適切な対応だ」がいずれも4割でほぼ並び、有意な差はみられません。

内訳をみると、年代については、若年層ほど「適切な対応だ」の比率が有意に低い傾向にありますが、それに対応して若年層ほど有意に高い傾向にあるのは「どちらとも言えない、わからない」で、「適切な対応ではない」の比率は、20代を除き、いずれも2割を上回りません。

また支持政党別にみると「自民党」「日本維新の会」支持層で、菅内閣の支持でみると「強く支持する」層で、いずれも「適切な対応ではない」の比率が有意に高い傾向にありますが、いずれの層でも最多回答は「適切な対応だ」であり、保守層ほど今回のTwitter社の対応を問題視する傾向にはあるものの、大勢を占めるには至っていないようです。

調査概要などについてはこちらから>>【速報】菅内閣の支持率が続落?!次の衆院選はどの党が伸びるのか……2021年1月選挙ドットコムリサーチ

© 選挙ドットコム株式会社