宇久のごみ運搬車両、上陸できず 島の処理施設廃止が裏目に

佐世保港へ到着したフェリー「いのり」。船首側にある可動橋が損傷して車両を降ろせないため、大型クレーンを使って貨物を降ろしている=同港鯨瀬ターミナル

 佐世保港鯨瀬の可動橋がフェリーの接触事故で損傷し、宇久島のごみ運搬車が本土に上陸できない状況が続いている。長崎県佐世保市はコストを度外視した「苦肉の策」として運搬車を博多港行きのフェリーに載せ、同市内のごみ処理施設までの間を往復させている。昨春、経費削減などを理由に島の処理施設を廃止したのが裏目に出た格好だ。
 昨年12月21日夜、佐世保港鯨瀬に到着した九州商船のフェリー「なみじ」が操縦ミスで桟橋の可動橋に接触し一部がへこむなどした。このため、フェリーから車両を降ろせなくなった。

 可動橋は、宇久島のごみ運搬車を運ぶフェリー「いのり」も利用。可燃ごみを市東部クリーンセンター(大塔町)、不燃・資源ごみを市西部クリーンセンター(下本山町)へ毎週2回ほど運んでいる。市は周辺市町にごみの受け入れ支援を打診したが、新上五島町や五島市からは「困難」と回答があった。長崎市への搬送はフェリーの直行便がないため断念した。
 佐世保市はやむなく、運搬車を博多港行きのフェリー「太古」に載せ、博多から陸路で両クリーンセンターにごみを運ぶ措置を取っている。可動橋の故障以降、27日までに計14回搬送。往復に3日程度かかるため、1回当たりの経費は4~5万円高くなるという。2月1日からは長崎市の畝刈港行きの貨物船を利用し、移動距離の短縮を図る予定。
 元々、島にごみ処理施設はあるが、市は、施設の老朽化や経費削減などを理由に昨春廃止。島内で出るごみは本土へ搬送して処理する方法に切り替えた。それから1年も経たないうちの今回のトラブル。市は施設の再稼働について「一度停止しており、以前の様には動かせない」とする。
 市は、これまでに生じた費用負担について、九州商船と協議中。同社は3月10日から車両の乗り降りが再開できるよう、復旧工事を進めるとしている。
 今回の事故は、島の基幹産業の畜産にも影響を及ぼしている。畜産牛の搬送もフェリーから別の貨物船に切り替えており、農家は牛の体調管理に気を配っている。宇久地区自治協議会の阿野房良会長は「今後、予期せぬ問題が出てくるかもしれない。島民の暮らしに影響が出ないよう対応してほしい」と話している。

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