被爆者の温泉保養所 半世紀の歴史に幕 高齢化で利用者減 雲仙・小浜「新大和荘」 セレモニーで名残惜しむ

最後の宿泊客らが名残を惜しんだ閉館セレモニー=雲仙市、新大和荘

 長崎原子爆弾被爆者対策協議会(原対協、三根眞理子理事長)が雲仙市小浜町で運営してきた原爆被爆者温泉保養所「新大和荘」(鉄筋コンクリート3階建て、22室)が1月31日、閉館。「大和荘」時代からの半世紀以上の歴史に幕を下ろした。30日夜には新大和荘で閉館セレモニーがあり、最後の宿泊客らが名残を惜しんだ。
 原対協は被爆者の健康診断や援護、福祉事業に取り組む公益財団法人。1965年、小浜温泉街近くに「大和荘」を開設。2010年、隣接地に移転、改称した。
 源泉掛け流しの宿泊施設で被爆者だけでなく一般も利用でき、周辺の温泉旅館よりも安い価格設定で運営してきたが、被爆者の高齢化などで利用者が減少。移転後の宿泊者数は11年度の1万5705人(うち被爆者9959人)をピークに、19年度は8471人(同4626人)に落ち込んだ。近年は年間2千万円以上の赤字が続き、昨年6月の評議員会で閉館を決定した。
 閉館セレモニーには最後の宿泊者36人や関係者が出席。三根理事長が「被爆者の皆さまの健康、福祉の増進の目的は一定果たしたと思うが、やはり寂しい。利用ありがとうざいました」とあいさつ。宿泊者や地元住民が三線(さんしん)やオカリナ、フォークソングなどを披露した。
 詩吟を披露した長崎市西山本町の被爆者、瀬戸口勇さん(78)は毎年10回近く利用してきた常連。「家庭的で、スタッフも親切で癒やされていた。被爆者が減り、閉館は仕方ないと思うが名残惜しい」と感慨深げに話した。
 同施設閉館で、原対協は保養施設運営から撤退。今後、同館の売却先公募を検討する。

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