「ロケツーリズム」成果着々 島原市、ロケ誘致でPR 地域振興の呼び水に 旅番組、CM増 地元への直接的経済効果も

武家屋敷通りでの映画「まぼろしの邪馬台国」の撮影風景=島原市下の丁(2008年3月、市提供)

 映画、テレビ番組のロケ地やアニメ、小説の原作の舞台となったスポットを観光資源として集客につなげる「ロケツーリズム」。地域振興の呼び水として、地方でもロケ誘致が活発化する中、2019年度からロケツーリズムに取り組む長崎県島原市が、全国放送のバラエティー番組やCM、映画のロケ地に相次いで選ばれるなど成果を上げている。担当者は「今まで見向きもしなかった客層が、作品を通して島原を知るきっかけになってほしい」と力を込める。
 同市は19年4月、県内の自治体では初めて映画製作者と地方都市を結ぶ「ロケツーリズム協議会」(東京)に正式加盟。同年度初めて計上されたロケツーリズムに特化した事業費99万円を活用し、年5回開かれる同協議会の会合などに参加。映像業界関係者らにローカル鉄道や湧水、歴史ある城下町の町並みといったロケ地として恵まれた土地柄をPR。以降、誘致活動を積極的に展開している。
 20年度には、前年度の約9倍となる事業費約930万円を計上。国内唯一のロケ地情報誌「ロケーションジャパン」への記事掲載や、撮影スポットを紹介する「島原ロケ地マップ」作製のほか、映像製作会社のプロデューサーを招き、撮影場所を探すロケハンツアーも実施した。

NHKドラマ「かんざらしに恋して」の撮影風景。後方は平成新山=島原市白谷町(2018年11月、市提供)

 こうした取り組みが功を奏し、同市が関わったロケの実績件数は増加傾向。市しまばら観光おもてなし課によると、誘致活動開始前の18年と19年がそれぞれ5件程度に対し、20年は19件と約4倍。旅番組のほか、飲料水や自動車メーカーのCMなどテレビ放送13件に加え、雑誌なども6件と成果が出ている。
 1月2日には、島原を舞台にした2時間のバラエティー番組が全国ネットで放送された。同市の試算では、CM広告料に換算した場合、6億3千万円に相当するといい、ロケ隊の宿泊費や弁当代で、地元への直接的な経済効果が約60万円あったことも判明した。
 年内にも撮影開始が見込まれる映画「今はちょっと、ついてないだけ」(柴山健次監督)の誘致にも成功。作家伊吹有喜さんの同名小説の映像化で、同市など全国4市町でロケが実施される。市内での映画ロケは「まぼろしの邪馬台国」(08年)以来となる。
 一般的に映画のロケは日数が長期に及び、現場に滞在する関係者の数も多いため経済効果も高いとされる。古川隆三郎市長は「作品を通してシティーブランドが向上し、島原のファンが増えてほしい。多くの人に訪れてもらえれば」と期待する。

 


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