【特集】2021年F1はここが変わる(3)コロナ禍で車体開発が凍結、史上初の予算制限導入も

 次世代F1マシンの導入は2022年に先送りにされたが、2021年F1シーズンにもレギュレーションには重要な変更がなされ、GPスケジュールの変更、ドライバーの移籍、新ブランドの参入など多数の変化がある。2021年F1にどういう変化が見られるのか、主要点を全3回にわたって紹介する。第1回「ドライバーが大移動、新ブランドが参入」、第2回「パワーユニット契約状況とGPスケジュール」に続く第3回では、レギュレーション上の主な変更点についてまとめた。

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■バジェットキャップ導入開始

 2021年から、全10チームの年間予算に上限枠がはめられる。F1GPの歴史上、初めてのことだ。具体的にはチームあたり、年間1億4500万ドル(約150億円)以上は使えない。ただしこの予算には、ドライバーの年俸、最上級幹部3人の給料、マーケティング費用は含まれない。

 今回のバジェットキャップ導入で明らかになるのが、10チーム間のあまりにも大きな経済格差である。たとえば最小チームであるハースとウイリアムズの年間予算は、150億円の上限枠にさえ届いていない。対照的に年間1000億円近くを使ってきたトップチームは、6月末に定められた中間報告期限までに人員や設備を大幅整理することに追われている。

 かといってファクトリーのスタッフを、大量に解雇するわけにもいかない。そのためたとえばフェラーリは、新たな組織を創設し、これまでダラーラに委託していたハース向けのパーツ製造を行う。メルセデスも新部門を設立し、同チームの大株主となったイネオスが参戦するアメリカズカップ用ヨットを開発、製作する。そしてレッドブルは、少なからぬスタッフをアルファタウリに出向させる。

 バジェットキャップの導入で、確かに予算は平準化される。しかし本来の目的であるチーム間のパフォーマンス差が縮まるためには、順調に行っても数シーズンがかかることだろう。

マラネロにあるスクーデリア・フェラーリのファクトリー

■タイヤがさらに固くなる

 昨シーズンのF1マシンのダウンフォースは、ピレリの想定よりはるか上の数値に達していた。そのため内圧を上げざるを得なかったのだが、当然ながらハンドリングは極端に悪化し、ドライバーからは大不評だった。FIAはさらにダウンフォースを削減するべく、技術レギュレーションを改訂した。しかし各チームのマシン開発能力を侮ってはいけない。シーズン中には、ダウンフォース値は更新されることだろう。

 今季のタイヤは、コンパウンド自体は2019年、2020年に使われたものと同じだ。しかし上述の状況から、ピレリは前後タイヤの構造を強化する変更を施した。その結果、フロントタイヤはよりスクエアな形状となった。一方でマシン後部はリヤタイヤの発生する乱流の影響をより受けやすいため、形状変更は極力抑えられている。

 内圧を低くしつつ、より頑丈なタイヤにする。そのため4本のタイヤの総重量は、去年より2.5kg重くなった。

F1バーレーンGP FP1で2021年用タイヤをテストするルイス・ハミルトン(メルセデス)

■パンデミックの影響で車体の開発が凍結

 世界的に厳しい経済情勢が続くなか、F1チームの財政状況がさらに悪化する恐れがある。そのためFIAは、2020年型マシンの基本的な継続使用を決定した。とはいえ空力パーツの開発は許可され、開発が凍結されるのはモノコックやギヤボックス、冷却系など、外側からは目に触れない部分である。ただしこれらに関して各チームは、トークンを使用することである程度の改良は可能だ。

 一方でスポーツ規約の変更に大きなものはない。あえて挙げるとすれば、レース中に自分のものでないタイヤを装着した際の措置が明記された。「3回以上ラインを越えることなくピットインして本来のタイヤに装着し直すこと」とされ、それに従わない場合はペナルティが科される。この新規約は言うまでもなく、昨年のサクヒールGPでメルセデスがジョージ・ラッセル車にバルテリ・ボッタス用のタイヤを装着してしまったゴタゴタが発端となって加えられた。

2020年F1イギリスGPパルクフェルメ

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