【Q&A】新型コロナ特措法と感染症法、改正の中身は 罰則強化 同調圧力の風潮高まる懸念

新型コロナウイルス対応の改正特別措置法などが賛成多数で可決、成立した参院本会議=3日午後

 新型コロナウイルス対応の特別措置法と感染症法が改正された。施行は13日。「まん延防止等重点措置」が新たに設けられたほか、正当な理由がないのに営業時間の短縮に応じない事業者や入院を拒否した人は罰則を科される。重点措置の発令要件があいまいな点や、罰則化によって「自粛警察」など同調圧力の風潮が高まる恐れが指摘されている。ポイントをまとめた。(47NEWS編集部)

 Q なぜ改正が必要なのか。

 A 菅義偉首相は、コロナ対策の実効性を高めるためだと説明している。

 Q 改正特措法の具体的な内容は。

 A 都道府県知事により強い権限を与え、飲食店などの事業者に時短営業などを「命令」できるようにした。これまでは要請や指示にとどまっていた。応じなかった場合、行政罰の過料を科すことができる。刑事罰と異なり、前科にはならない。

 Q いくらなのか。

 A 緊急事態宣言下であれば「30万円以下」だ。新設されるまん延防止措置下だと「20万円以下」だ。

 Q まん延防止措置とは何か。

 A 緊急事態宣言の前段階との位置付けだ。まん延防止に必要と判断した場合、首相が期間や区域を公示する。6カ月ごとに何回でも延長できる。

  Q 発令の要件は。

 A 政府は、感染状況を示す指標のうち「ステージ3」(感染急増)相当での実施を想定しているようだ。ただ法律に基準を書き込むと「機動的に使えなくなる」として、詳細は政令で定めるとしている。西村康稔経済再生担当相は「緊急事態宣言に比べれば地域、業種はかなり絞られる」と強調している。

 Q 乱用される恐れはないのか。

 A 野党内には「運用が恣意(しい)的になる」と懸念する声がある。与野党が採択した付帯決議では、措置の実施には「学識経験者の意見を聴く」ことを求め、期間の延長や区域の変更を含め、国会への速やかな報告を盛り込んだ。法的な拘束力はない。

 Q 時短営業は事業者にとって死活問題だ。

 A 法律は「財政上の措置を講じる」と規定している。首相も「経営の影響度合いなどを勘案し、必要な支援となるよう適切に対応する」と説明している。しかし具体的な内容には踏み込んでいない。事業者からは、実際の損害に応じた補償を求める声が強まっている。

東京都新宿区の歌舞伎町周辺で外出自粛や飲食店の営業時間短縮などを呼び掛ける都と区の職員=1月8日

 Q 感染症法はどう改正されたのか。

 A 入院に応じなかったり、入院先から逃亡したりした感染者らに「50万円以下」の過料を科す。保健所による行動歴などの調査に応じず、虚偽の回答をした場合も「30万円以下」の過料を科す。

 田村憲久厚労相は、患者や家族に必要な介護や保育などのサービスが確保できないため入院を拒否している場合は「正当な理由になり得る」と説明。罰則の対象としない考えだ。

 Q 罰則化に問題はないのか。

 A 保健所などの現場からは、罰則があることで検査を避けたり、周囲に感染を隠したりすることにつながらないかと心配する声が出ている。国内では、感染者や医療従事者への差別や偏見が後を絶たない。同調圧力を意味する「自粛警察」という言葉が広がったほどだ。罰則化によってこうした風潮が強まりかねない。

 差別や偏見に苦しんできたハンセン病の元患者たちは「新たな差別が生まれるきっかけになりかねない」と罰則化に反対している。70人を超える憲法学者は「政府の失策を個人責任に転換するものだ」とする声明を発表した。

 Q 国会審議は十分に尽くされたのか。

 A 政府与党は、修正協議で、野党の要求を一定程度を受け入れた。それでも衆院での審議は本会議と委員会を合わせて10時間ほどだ。私権制限が強化される内容であり、より慎重で十分な議論があっても良かったはずだ。

 何より特措法改正は以前から浮上していたテーマだ。緊急事態宣言の再発令中に提案した政府、与党の姿勢は問われるべきだ。

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