【昭和~平成 スター列伝】決まれば終わり…ゴッチ直伝「卍固め」を手に入れて猪木の快進撃が始まった

69年2月11日、インタータッグ戦でウィルバー・スナイダーに卍固めを決める猪木

【昭和~平成 スター列伝】コブラツイスト、ジャーマンスープレックスホールド、延髄斬りなど多くの必殺技を持つアントニオ猪木だが、代名詞といえばやはり「卍固め」だろう。

初公開は1968年12月13日、日本プロレスの後楽園ホール大会だった。タッグマッチ(60分3本勝負)でジャイアント馬場と組み、ブルート・バーナード、ロニー・メイン組と激突。BI砲は相手の反則で先取し、迎えた2本目4分34秒、猪木がバーナードに絡みついてギブアップを奪ってみせた。

当時の本紙によると、技の名前は「グレープバインホールド(ブドウづる固め=オクトパスホールド=タコ固めともいう)」。試合後、猪木は「ゴッチ直伝のグレープバインを研究し始めてもう半年ぐらいになるでしょう。この数週間、チャンスを狙っていたが、今日やっとつかんだわけだ。いつものコブラはスカされるし、誰にでもできるが、これだけはウルトラCクラス。相手が大きいほど決まる利点がある」と胸を張った。

一方で〝若獅子〟猪木の新必殺技の名称がグレープバインホールドでは、いまいちパッとしないと考えたのだろう。日プロを中継していた日本テレビは、視聴者に技の名前を公募。69年2月6日、3万5000通を超える応募の中から「卍固め(アントニオスペシャル)」が選ばれた。応募者の中から100人に猪木のサイン入りブロマイドなどが贈られることになっており、7日の後楽園ホール大会のリング上で抽選会が行われた。

その後、猪木は卍固めに磨きをかけようと連日、特練に明け暮れる。師匠カール・ゴッチは「これからは仕上げといえる段階で、筋肉、骨格に卍固めを教え込んでいくことが大切である。パートナーをケガさせないよう一日に10回、20回と決め、体で覚え込み、無意識にズバッと決まるようになれば本物といえる」と指摘。その上で「今のところ猪木は頭で完全にわかっているが、これを筋肉、骨格に伝達する点が仕上げ期のポイントといえる」と話した。

これに「どんな相手にでも、いつでも決まるようにするのが最終目標。入る手段、方法は五、六通りはある」と応じた猪木。決まれば終わり…そんな必殺技を手に入れた猪木の快進撃がいよいよ始まる。(敬称略)

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