さすが庶民の味方スズキ! 高齢者限定の残価設定プラン開始で、ライバルを突き放す

スズキが2021年2月2日より60〜75歳の方を対象とした「途中解約特典付き残価設定クレジットローン」の販売をスタートした。支払い期間中でも、免許返納などでクルマに乗らなくなったら、無償で返却可能なのだという。今回はスズキが新たに始めたプランを中心に、高齢者の新車購入方法を考えてみたい。

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クルマは生活の必需品! 簡単に免許変更できない人も

運転免許返納者数は2010年は6万5000人程度であったが、2019年には10倍の60万人にまで増えている

ご存知の通り、日本は超高齢化社会の真っ只中にいる。自動車業界もその問題に直面しており、高齢ドライバーによる事故も増加の一途をたどっている。それに伴って免許返納をする人も年々増加傾向にあるのだが、東京など公共交通機関が充実している地域ならまだしも、地方となれば話は別。クルマを手放してしまえば、たちまち生活が立ち行かなくなってしまう方も多いのだ。

コロナ禍の今、感染リスクから公共交通機関を利用したくないという人も増えている

電車やバスが一日に数本しか来ない地域もざらで、タクシーを毎回使っていればもちろんお金もかかってしまう。そのため高齢者であっても、生活のためにクルマを乗り続ける人は多い。

万一のときでも安心! 途中解約が最大の特徴

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となれば衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備がついたクルマに乗り換えればいいじゃないか! との意見もあるが、そう簡単に乗り換えられるワケではない。2021年2月現在、運転支援機能を備えるクルマへの乗り換え促進のため、高齢者に対し国からサポカー補助金が支給されるが、それもせいぜい10万円以下だ。軽自動車ですら諸費用込みで200万円程度する時代には、ちょっと物足りない。

現在クルマの購入方法は現金一括のほかにさまざまなローンプランも存在し、幾分買いやすくはなっている。だがローンの場合、支払い期間中に万一のことがあった場合のことを考えるとおいそれと買い替えに踏み切れないのだ。

60〜75歳の方限定で、衝突被害軽減ブレーキ搭載車が対象となる

そこで今回スズキがはじめた「途中解約特典付き残価設定クレジットローン」は朗報である。高齢者本人のみならずご家族の方にとっても、、もっといえばご家族の方々も後々のことを考えても安心して買い替えに踏み切れるのだ。

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今までの残価設定と違いは!?

具体的にサービス内容をみてみよう。

通常スズキは「かえるプラン」という残価設定ローンを用意している。3年/5年プランが存在し、軽自動車は3.9%、普通車であれば2.9%と低金利で利用できる。ところが途中解約特典付き残価設定クレジットローンの支払い期間は5年のみで、かつ金利も軽自動車は5.9%、普通車は4.9%と少々割高な印象だ。

だが病気や免許返納時にクルマを返却出来る特約があるだけでなく、5年乗り続ければいくつかのキャッシュバックを受けられるという特典も用意されている。さらに病気の相談や緊急時に24時間265日対応してくくれる「メディカルアシストサービス」も付帯するなど、安心してカーライフを送れる充実の内容である。

そして今回注目すべきは新車だけでなく、スズキ認定中古車も対象な点だ。いくら残価設定で通常よりも維持費が抑えられるとはいえ、決して安いモノではない。そこでより安価な認定中古車も対象なのは、かなりの朗報と言えるだろう。

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高齢者プランはスズキとトヨタのみ……この動きは広まるか!?

キントをはじめとするサブスクリプションは、車体価格と自動車税などの維持費、なかには任意保険までもが一体となった定額プランだ。一般に保険料が高いと言われている若年層と高齢者も含め、全年齢で一定の価格のため注目が集まっている

今回スズキが高齢者プランをスタートさせるのをきっかけに、他の自動車メーカーの動向も調べてみた。するとトヨタのKINTOと三菱のウルトラマイカープランには途中解約の制度があるものの、いずれもサブスクリプションサービスという、これまでとは少々異なる新しい購入スタイルである。販売店レベルで展開している高齢者向けのサービスはあるが、高齢の方が安心して購入できるプランはほとんど存在しないのだ。

先にも述べたが、今日本は超高齢化社会と言われており、この状況を打開する術もない。加えて、今や日本の人口の約3割が高齢者が占めており、彼らのニーズに応える必要もあるのだ。ちなみに運転免許保有者の22.9%が65歳以上と全体の2割にも及んでいる。

安全支援機能が進化し、搭載車種が増加するのは非常にいいことだが、肝心の高齢者が簡単に買えないのなら、自動車メーカーとしても考えなくてはならない問題である。

それだけにスズキ以外のトヨタや日産など大手メーカーも高齢者に特化したプランを提供する必要があるのではないか。今回のスズキが提供するサービスが起爆剤となり、誰もが安心できるクルマ社会の実現に期待したい。

【筆者:MOTA編集部 木村 剛大】

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