【特集】2050年の脱炭素社会の実現に向けて新潟県内でも注目される水素関連ビジネス

新潟県内でも脱炭素社会へ取り組み相次いでいる

新潟県内で、脱炭素社会に向けて水素をめぐる技術や、関連ビジネスが注目されている。水素は、燃焼してもCO2(二酸化炭素)を出さず、水しか排出しない「究極のクリーンエネルギー」といわれており脱炭素社会の柱になると言われている。今後、水素を活用した技術は、国内外で急速に普及することが予想され、県内の産業発展にいかにつなげていくかが注目される。

2020年10月に菅内閣総理大臣が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と表明し、同年12月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定。「水素ビジネスは今後大きな成長が期待される」(新潟県内エネルギー関連企業役員)。

新潟県も、2020年9月に「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す」と表明。県内には全国一の生産量を誇る原油田・天然ガス田があり、新潟港にはLNGや石油の備蓄基地などのエネルギー関連施設が集積、また長大なパイプラインを通して首都圏などに天然ガスの輸送が行われるなど、日本の重要なエネルギー供給拠点にもなっている。また、県内6カ所の化学製品工場では製造過程で水素が発生することが確認されている。県内ではこれまでも、水素サプライチェーン構想の策定や、洋上風力発電導入の可能性・課題検討など、脱炭素社会に向けた取り組みが数多く実施されており、全国的に見てもカーボンニュートラル化に向けた先導的な取り組みを実現する可能性が高い地域と考えられている。

1月26日には、新潟県と関東経済産業局が連携して、関連するエネルギー事業者等で構成する協議会を開催。県内で水素ビジネスを手掛ける企業や大手商社、地元金融機関から30人が参加。3月下旬に中間とりまとめを行う予定だ。同日には、「新潟港カーボンニュートラルポート検討会」も設立され、新潟東港での集中的な脱炭素化を検討。今後、実証実験なども行われる見通しだ。

今年1月26日に開催された「新潟港カーボンニュートラルポート(CNP)検討会」

企業の活動も着実に進展している。2019年4月には、日本水素ステーションネットワーク合同会社と岩谷産業株式会社が新潟市中央区に、北信越地方と本州日本海側都市としては初となる「イワタニ水素ステーション新潟中央」をオープン。水素燃料電池自動車(FCV)約10台分の水素を常時貯蔵。満充てん時水素5キログラムのFCV1台を3分で満たすことができる。

2018年11月に本州日本海側初となる燃料電池フォークリフト専用の水素ステーションを完成させ、水素の世界に飛び込んだのは青木環境事業株式会社。水素をフォークリフトの燃料として利用することで、稼働時にCO2を排出しないクリーンな処理工場づくりを目指し、新たな環境保全の道を追求していく。また、2020年5月本格稼働した産業廃棄物発電施設では、企業などから排出されるごみを焼却し、その熱を電気に変換することで構内電力として活用し、余剰電力で水素を製造。併設された燃料電池フォークリフト専用水素ステーションを介して、構内用燃料電池フォークリフトの燃料とする取り組みもしている。

「イワタニ水素ステーション新潟中央」(2019年9月撮影)

水素社会で活用が期待されるのが、水素をエネルギーとした水素燃料電池自動車だ。長距離を運転する自動車では、充電時間がかかる電気自動車は厳しいとの意見が多い。一方で、水素燃料電池車の場合、水素の充填にかかる時間は軽油よりも短く、連続して長距離を運転することも可能となる。新潟県は株式会社東京アールアンドデー(東京R&D)に小型燃料電池バスの開発を委託。ベースとなるディーゼル車両を改造する形で開発を行うもので、2020年度は、車両設計、システム設計、車両開発を実施。車両開発では新潟県内企業と協力をしながら進める計画で、2021年度には車両の性能試験、走行試験、ナンバー取得を行い、その後、新潟交通株式会社による運用を目指して、検討を進める。

製造途中の燃料電池バスを用いながら解説を行う株式会社東京R&D社員(2020年11月撮影)

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ほかにも県内の企業では、金属加工のハセテック(燕市)が、再生可能エネルギー分野(メガソーラー、燃料電池、水素ステーション)などに関わる部品製造を積極的に行っており、主に燃料電池配管、水素配管を制作している。

国のカーボンニュートラル宣言で、急速に広がる脱炭素の流れ。エネルギー関連企業役員は「水素ガス産業で当社の果たす役割が大きく、当社としてもさらに成長が期待できる」と話す。関心が高まっている時を好機ととらえ、再生可能エネルギーの普及に力を入れてきた新潟県と企業が、全国をリードする取り組みが注目される。

(上写真2枚)新潟県の資料より

© にいがた経済新聞