「自然減」常態化 「社会増」分を帳消し 1400人維持へ 町の取り組み続く

小値賀町の人口推移

 長崎県小値賀町の人口は1950(昭和25)年にピークに達し1万968人だった。当時は基幹産業の農漁業が盛んだったが、高度経済成長に伴い進学や就職で島を離れる人が増え始めた。2020年12月末現在で2336人まで減ったが、町はさまざまな人口減少対策に取り組み、手応えを感じている。
 09年度、木造築100年前後の古民家を活用した宿泊事業をスタート。専用の風呂トイレが付いた一棟貸し切りの方式で、島内の散策や住民との交流を体験してもらい、若い女性を中心に人気を呼んだ。06年度に始まった民泊事業と併せ、旅をきっかけに移住の選択肢とする人が増えてきたという。
 町によると、Iターン者は07年度が2人だったのに対し、08年度は10人に増加。19年度まで年間15人前後から20人台で推移している。
 町は移住の前に、農漁業を希望する人に地域おこし協力隊として1、2年活動してもらい、島の生活になじんでもらう。新年度からは2週間~3カ月の研修制度をスタート。大学生らにインターンとして島が抱える農漁業の課題を学んでもらう。

小値賀町の社会増減

 一方、高齢化率は約50%に上り、死亡数が出生数を大きく上回る「自然減」が常態化。転入が転出を上回る「社会増」分は「帳消し」になるため、町は人口の減少幅をできるだけ抑制する方針を立てている。
 国立社会保障・人口問題研究所の試算では、1人の女性が生涯に生む子どもの数を示す「合計特殊出生率」が2.07人を下回り、転出が転入を上回る「社会減」が続けば、45年の人口は約940人まで減少。だが合計特殊出生率が2.07人を超え、「社会減」にならなければ約1400人を維持できるという。小値賀の11~15年の合計特殊出生率は2.11人だった。
 こうした事情を背景に町は子育て世代の移住に向け、教育環境の充実に取り組む。小値賀には小中学校と高校が各1校あり、08年度からは少人数を生かして連携し、手厚い一貫教育を本格実施。中3と小6を対象にした19年度の全国学力テストでは中3は国数英すべての対象科目で、小6は国語と算数のうち国語で全国平均を上回るなど、成果を出している。
 町の移住政策担当者は「小値賀の評価が高まれば高校を卒業して島を離れた人たちのUターンにもつながるだろう」と期待する。

小値賀町の自然増減

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