DeNAドラ1入江、甲子園優勝で芽生えた反骨心「ジェラシー、悔しかったです」

DeNA・入江大生【写真:小谷真弥】

DeNAドラフト1位入江は明大で投手再転向、甲子園V投手・今井のタオルを部屋に飾った

DeNAのドラフト1位・入江大生投手(明大)が開幕ローテーション入りへアピールを続けている。新型コロナウイルスの影響を受けたプロ1年目は春季キャンプは無観客開催。歓声のない中での鍛錬の日々となっているが、これもブレークの力に変えるという。作新学院高のチームメートで甲子園優勝投手となった今井達也(西武)へのライバル心や投手再転向からドラフト1位に成長した明大時代、また一発ギャグ2000個のルーツについて大いに語った。【取材・構成/小谷真弥】

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あいつには負けたくない――。入江がオンラインインタビュー中に強烈なライバル心を見せたのは、2016年夏の甲子園V投手となった元チームメートの話題になった時だった。

「もうジェラシーです。だいぶというか、めちゃくちゃ悔しかったですね。当時は(今井投手で勝ち上がる度に)『うおぉぉぉ~』とこみ上げてくるモノがありました」

作新学院高では投手として2年夏に甲子園出場。3年春はエースナンバーを背負っていたのが、控え投手だった今井が急成長。3年夏の甲子園は背番号「3」の一塁手として出場した。史上7人目となる3試合連続本塁打を放って全国制覇に貢献。侍ジャパン高校代表にも選ばれたが、どこか投手への未練、悔しさが残ったという。明大では再び投手に転向した。

「小さい頃からの夢は甲子園に出場することでした。自分が投げないことでチームが勝てるなら、投手は辞めてもいいと思っていました。ただ、小さい頃に投手として野球を初めて、高校にも投手として入学。ここまで自分を育ててくださった指導者や周りの方のためにも、もう1度、投手として、いい報告がしたいと思ったんです」

今井は高校球界のスターとしてドラフト1位で西武入り。ひと夏で野球人生を変えたシンデレラボーイとなった。入江は明大合宿所の自室に今井が甲子園で使ったタオルを貼り付けた。

「ちょっとモチベーションが落ちた時や、やる気が出ない時に、そのタオルを見て『頑張ろう』と思ってました。今井がプロで投げている姿を見て、いつか自分もプロの舞台に立ちたいと。大学の4年間ずっとタオルを部屋の壁に貼ってました」

一発ギャグ2000個も野球のため「チームに流れを持ってくる投手に」

明大では1年先輩の森下暢仁(広島)、伊勢大夢(DeNA)らハイレベルの投手陣に揉まれた。2年秋まで未勝利と結果は出なかったが、「お手本のような先輩方がいて学ぶことが多かったです。野球に対する姿勢や私生活、モチベーションの保ち方。プラスになることは多かった」。コロナ禍に巻き込まれた2020年はドラフト1位でプロ入りすべく、徹底的に自己管理した。

「自粛中の1日1日を野球に繋げるようにしました。歩き方だったり、姿勢、筋力トレーニング、食べるもの、食べる時間、睡眠、体のケア……。全てを考え直しました。睡眠時間は絶対に7時間以上は寝るように30分前から布団に入って。歩き方は一流選手の方に悪い歩き方をしている選手はいないと思って、姿勢を正して歩くようにしました」

「コロナの期間で、他の選手を追い抜いてやろうと思ってました。自粛期間が長ければ長くなるほど自分がうまくなれる。(コロナ禍も)プラスに捉えてやっていました」

一発ギャグ2000個。この明るいキャラクターも野球のためにと明大時代に培ったという。

「きついランニングも暗い顔をしてやるより明るくやった方が絶対にいいと思ったので、積極的にやっていました。1、2年生の時にやることが多かったですが、3年生になっても、ここぞの場面で。チームに流れを持ってくる投手になりたい。その中で明るさは必須かなと思っています。プロでも、このキャラクターはどんどん出していければいいです」

昨秋ドラフトでDeNAから単独1位指名を勝ち取った。背番号は佐々木主浩氏が付けた「22」。球団からは即戦力の先発右腕と期待され、キャンプ1軍スタートを切った。

「プロの選手は意識の高さが違うなと思いました。みんな逆算して行動していて、練習の準備体操が始まる前から準備をしている。準備の準備は凄いなと思いました。しかも、それが当たり前の雰囲気。かなり勉強になっています」

「プロでは大一番の試合で負けない投手になりたいです。今井、森下さんと高校、大学で優勝する投手を近くで見てきた。プロではそんな存在になって、近づいて追い越したいと思っています」

DeNAで球界のエースになる――。弱肉強食のプロの世界を反骨心で這い上がる。(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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