21年度長崎県予算案から<1> 財政 税収大幅減「借金」増加

記者会見で当初予算の概要や財政状況について説明する中村法道知事=県庁

 長崎県は16日、中村県政3期目の総仕上げとなる総額7486億3100万円の2021年度一般会計当初予算案を発表した。新型コロナの影響で県税収入などは大幅に減り、「借金」に当たる県債残高は前年度よりも増加する見込み。県は21年度末までに「貯金」に当たる財源調整3基金を取り崩さない財政運営を目指しているが、21年度末の取り崩し額がどうなるかは不透明なままだ。
 自主財源に乏しく、高齢化の進展に伴い社会保障関係費が増大している中、中村県政はこれまでも厳しい財政運営を強いられてきた。16年度から5カ年の県行財政改革推進プランでは、収支改善目標額を338億円に設定。県税収入の確保や県有財産の売却・有効活用、人件費の抑制、内部管理経費の見直しなどを進めた結果、19年度までの4年間で353億円の効果を上げた。17年度からは「財政構造の総点検」に取り組み、年間5億円の収支改善効果を生み出しており、「一定の効果はあった」と評価する声はある。
 だが、借金に当たる県債残高(臨時財政対策債を除く)は10年度末の8864億円から19年度には7901億円まで減ったが、20年度から再び増加に転じ、21年度の当初予算段階で8679億円に膨れ上がった。借金が減らない上、貯金に当たる基金の残高も減り続けている。基金の取り崩し額は16年度の48億円から19年度には11億円まで圧縮したが、10年度末には457億円あった基金の残高は、20年度2月補正予算後には173億円まで減る見通しだ。
 財政指標(普通会計)の推移を見ると、数値が高いほど財政に余裕がないことを示す経常収支比率は、16年度の97.9%(全国40位)から18年度は98.1%(同45位)に悪化。19年度は97.9%と0.2ポイント改善しているが、財政の硬直化は解消されていない。
 一方、財政規模に占める公債費(借金返済額)の割合を示す実質公債費比率は19年度で11.2%(同24位)、数値が高いほど将来的に負債が財政を圧迫する可能性を示す将来負担比率は198.3%(同23位)と全国中位をキープしている。財政課は「この2指標は現状では問題ない」とした上で、「国の制度をうまく使って、交付税措置率が高い県債を活用するために知恵を絞らなければならない」と気を引き締める。
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 厳しい財政事情の中、中村県政はどのように課題解決に取り組むのか。各分野の主要事業を中心に予算案を点検する。


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