60歳引退までに貯めた3000万が70歳でなくなる!?老後破綻を招くメタボ家計

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、54歳、会社員の男性。60歳で引退できるように、退職金を含めて夫婦で3,000万を老後資金として準備している相談者。ところが、シミュレーションしてみると70歳で資金が尽きる結果に。相談者が今からとれる対策は? 家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

老後資金は3,000万円できるよう、貯金も節約も頑張ってきました。60歳で退職することを見込んで多めに準備できるように計算してきたのです。ただ、老後資金と見込んでいる蓄えのうち、2,000万円強が退職金。ですからあまり偉そうにできる状況ではないのですが、子ども2人を一人前に育て上げ、貯金もできたので、自分ではよく頑張ったと思っています。

ですが先日、インターネットでダウンロードできる「ライフプラン表」に入力をしてみたところ、70歳までこの3,000万円が残らない結果となりました。老後2,000万円問題がありましたが、それを超える金額を準備できるので大丈夫だろうと思っていただけに、かなりショックです。自分の入力の仕方が間違っていたのかもしれないと思い、何度か説明を読みながらやったのですが、すべて同じ結果です。

夫婦ともに還暦目前ですから、いまからではどうにもできないかもしれませんが、何に取り組んでいくと老後の生活が安心できるものになるでしょうか。せっかく頑張って3,000万円準備できる目途が立ったのに、悔しいです。

【相談者プロフィール】

・男性・54歳・会社員、妻:53歳・専業主婦、子ども2人は独立

・手取り収入:月収46万2,000円、年間ボーナス約90万円

・貯蓄:800万円

・毎月の支出の目安:43万2,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(住宅ローン ):7万2,000 円

・食費:9万3,000円

・水道光熱費:2万6,000円

・通信費:2万1,000 円

・生命保険料:3万2,000円

・日用品代:7,000円

・医療費:6,000円

・教育費:1万6,000円

・交通費:4,000円

・自動車関連費:2万3,000円

・被服費:3万1,000円

・交際費: 17,000円

・娯楽費:7,000円

・こづかい:50,000円

・し好品(酒): 5,000円

・その他:2万2,000円


FP:老後資金の目標額を準備できる見込みが立っていたのに、予想外に早く無くなると予想できることが分かったのですね。60歳から65歳の無年金の時期に支出が多くなることを見込んで、多目に準備をされたようですが、年金受給後の生活費も実際は多くかかることが見込めたことによる結果なのかもしれません。

老後破綻になる家庭の特徴は「高額な生活費」

まず、老後資金が思っていたより早くなくなってしまうご家庭の特徴を平たくいうと、「生活費支出が高い」です。もしかするとお子さんが独立され、生活費が減って今の状態なのかもしれませんが、不思議なもので、お子さんにかかる支出がなくなっても支出の総額が変わらないご家庭も多いのです。

理由はどうあれ、一般的に考えると、年金受給額は妻が専業主婦のご夫婦で月に約22万円ほどです。もちろん収入状況により上下しますので、ご相談者もそうだとは言い切れませんが、目安にしてください。

老後の生活費は、今の家計から住宅ローンの支払いが無くなるのなら、36万円で暮らせると見込めます。この36万円と年金受給額の22万円の差額の14万円が、65歳以降、1カ月に不足する生活費です。

生活なので支出は一定とはならないものですが、それをもとに95歳までの30年間の不足する生活費を考えると、5,040万円(14万円×12カ月×30年=5,040万円)にもなります。それに60歳から65歳まで働かず、収入のない5年間の生活費2,160万円を加えると、7,200万円。3,000万円の蓄えでは全く足りないことが分かります。

これを改善するにはもっと頑張って貯金をするとともに、生活費を圧縮し、生活費の補てんをする金額を減らすことにも取り組んでいただきたいもの。ご相談者の家計は全体的にメタボ家計で、食費、水道光熱費、通信費、交際費など比較的支出が多いと思われる費目が目立ちます。全体的に支出を絞り、月の生活費を1万円減らせると、老後までに準備する生活費は360万円少なくてすみます。3万円減らせれば1,080万円減らせます。

働く期間を延ばす

2021年4月1日から「高年齢者雇用安定法」の改正が施行され、70歳までの雇用が企業の努力目標になりました。今まで以上に長く働ける可能性が高まっているのです。

データを見ると、60~64歳の就業率は68.8%ほど。65歳から69歳は46.6%です。(「令和元年版高齢社会白書」より)この割合は年々増えており、10年前に比べそれぞれ10%ほど増えています。雇用形態は様々でしょうが、60代後半でも半数近くが何らかの形で働いているのです。60歳でスパッと「辞める」と決めるのではなく、柔軟に働くことを検討してみてもよいと思います。

生活費の負担が減ると、老後資金の必要額も減ります。できれば再雇用など会社の制度を利用して働けるとよいのですが、それが精神的にも肉体的にも苦痛であるなら、パートやアルバイトのような働き方に変えてもよいと思います。

また、ご相談者だけではなく、妻も少し働いてみるなど、収入を得る方法は様々考えられますから、状況に合わせた収入の得かたをご夫婦で相談しておいてはいかがでしょうか。

老後資金を長持ちさせるために

これまで、支出を減らすこと、収入を得ることに触れてきましたが、老後資金を長持ちさせるには3つのコツがあります。

(1)収入を得る
(2)支出をコントロールして下げる
(3)すぐに使わないお金を運用して金額が目減りすることを防ぐ

以上の3つです。

取り掛かりやすいところからはじめてよいのですが、1つだけを見て「5万円節約しなくちゃ」「バリバリ稼がなくちゃ」となる必要はありません。「3万円を稼いで2万円節約する」というように柔軟に考え、バランスを取りましょう。

今回お伝えしたことに取り組んでいただければ、ご相談者のライフプラン表も良いほうへ変わってくるはずです。支出削減、収入を得続けることの両方を意識し、ご夫婦で納得のいく着地点を見つけていただければと思います。

© 株式会社マネーフォワード