県知事が「聖火リレー中止」を表明した島根の複雑な“お家事情”

過去でゴタゴタしているのは橋本新会長だけじゃなかった?(代表撮影)

島根県の丸山達也知事は18日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子氏が就任したことを受け「直近まで五輪相の大役を担い、アルベールビル冬季五輪のメダリストでもある新会長の活躍を心より期待している」とのコメントを出した。しかし、丸山知事は政府や東京都の新型コロナウイルス対応を批判し、島根県内の聖火リレーの中止意向を表明し、物議を醸している。県知事が「聖火リレー中止」表明した島根のお家事情とは…。

丸山知事は17日に県内で実施する予定の東京五輪の聖火リレーについて「開催すべきでない」と中止の意向を表明した。

感染拡大地域と、島根県など感染者が少ない地域には支援に差があり「不公平」だと指摘。聖火リレーを実施するための条件として、県内の飲食業者も同等に支援するよう求めた。

県は警備費用などを予算化しており、県の判断で事実上中止することができる。つまり、支援要望のためにリレー中止を手段として使ったというわけだ。

これに政府関係者は新型コロナウイル対策に不備がない中、「開催中止に結びつけるのはおかしい」と不快感を示す声が上がっている。

しかし、地元記者は「県庁に寄せられた県民の声の7割が賛同。県庁の人は『補助金でもってる県なのに、国に楯突いていじめられるんじゃないか』と心配していたが」と明かす。知事の発言に、理解を示す聖火ランナー予定者も多いという。

島根は感染者が少ない。「一日に多くて2人程度で、最近は0の日もある。東京や大阪に出掛けた人や、県外から来た人にうつされるケースばかり。先週、出雲大社近くの飲食店で店員が2人感染し、近所住民は『また県外からか!』と怒っていた」と同記者。

特にすごいのは、感染者が多い東京への恐怖感だそう。松江市内の飲食店店主が明かす。

「地元企業は早くから東京出張を取りやめている。昨年の秋口、2泊3日で東京へ行ったが、帰って来たら『コロナをもってると怖いから』とみんな自分を避けていった。何の症状もないのに『会話しちゃった。大丈夫かしら』とグループLINEで回された」

感染者が少ないため、コロナにかかり、個人が特定されるのを一番恐れているという。

島根は自民党の“保守王国”で、国会議員を頂点に県議、市町村議、党員のヒエラルキーが長く続いた。ところが2018年9月の自民党総裁選で、地元選出の竹下亘衆院議員が劣勢の石破茂氏を支持したことで、軋轢が…。

「反旗を翻した一部自民県議らは、19年4月の県知事選で独自に丸山氏を候補に擁立。竹下氏ら国会議員が推す候補と保守分裂選挙となり、結果、丸山氏が当選した。この件は竹下氏が自民党県連会長を退くことで、双方がいったん手打ちにしたが、今回の丸山発言で再燃した格好」と前出記者。

案の定、竹下氏は18日、記者団に「知事の発言は不用意だ。注意しようと思っている」「知事の発言に困惑している。誰も知事に付いてこない」とブチ切れた。

関係者によると「丸山知事は国会議員や県議、地元市町村の首長には全く根回しせず、独自に聖火リレー中止構想を進めて発表した」という。泥仕合の様相を呈している。

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