ボン・ジョヴィが勝負を賭けた名盤「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」 1986年 8月25日 ボン・ジョヴィのアルバム「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」が日本でリリースされた日

日本初! HR / HM歴史的イベント「SUPER ROCK 84 IN JAPAN」

1984年8月11日、『SUPER ROCK 84 IN JAPAN』のステージにボン・ジョヴィは立っていた。場所は埼玉の所沢にある西武球場。アリーナの中央あたりに陣取った僕には、ジョン・ボン・ジョヴィの少し緊張した表情が良く見えた。

日本初とも言っていいハードロック / ヘビーメタル(以下HR / HM)フェスティバル。この時の参加バンドは、アンヴィル、ボン・ジョヴィ、スコーピオンズ、ホワイトスネイク、そして我が神、ザ・マイケル・シェンカー・グループ(MSG)。今ではちょっと考えられないくらい豪華なラインナップだ。

しかも、この時のホワイトスネイクのドラマーはコージー・パウエルだし、スコーピオンズのルドルフ・シェンカー(兄)とマイケルシェンカー(弟)の兄弟共演の実現などなど、当時のHR / HMファンにとってのみならず、参加バンドのメンバーにとっても歴史的イベントだったわけで、本国アメリカでのデビューから僅か半年、日本でのデビューからたった3か月でそのステージに立つボン・ジョヴィのメンバーが、既に名古屋、福岡、大阪の公演を経験してきたとは言え、緊張するのは当たり前だ。

ボン・ジョヴィ、本人の強い希望でバンドデビュー

ボン・ジョヴィのデビューは前述の通り1984年。元々はジョン・ボン・ジョヴィのソロプロジェクトとして動いていたのだけど、ジョン本人の強い希望でバンドとしてデビューすることになる。

ブルース・スプリングスティーンの大ファンで、強い影響を受けたことを公言しているジョンだが、もし、ソロアーティストとしてデビューしていたら、ブライアン・アダムスやリック・スプリングフィールド、ジョン・メレンキャンプなどと並び立ち、一定の人気は得ただろうが、これほど成功できたどうかはわからない。トータルセールス1億枚プレイヤーになれたのは、バンドとしてデビューしたからこそだと僕は思う。

また、ジョンは、そのルックスの良さから映画フットルースの主人公にほぼ決定していたというのも有名な話。この話もジョン自らの意思で断っている。

この判断も大正解だったのではないかと僕は思う。余計なイメージや先入観もなく、いきなり現れた甘いルックスのしゃがれ声のヴォーカルのイカしたバンドとして彼らを迎えることが出来たのだから。

僕はジョンのような声が大好きなので、すぐにボン・ジョヴィが好きになった。もちろん、デビュー曲の「夜明けのランナウェイ」のすばらしいメロディにも一瞬で魅了されてしまった。アルバム『夜明けのランナウェイ(Bon Jovi)』もすぐに購入。『SUPER ROCK 84 IN JAPAN』の時には既に受け入れ態勢は万全に整っていたわけだ。当然、僕と同じように、彼らのファンは会場にもたくさんいたわけで、ボン・ジョヴィはその大歓迎振りに感動したと後に語っている。

一発屋の汚名を返上、サードアルバム「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」

そんな、ボン・ジョヴィが一発屋で終わるか否か。その真偽が試されることになる2枚目のアルバムが『7800° ファーレンハイト』。1985年に発売されたこのアルバムは残念ながらデビューアルバムを超えることが出来なかった。シングルカットも特になく、僕にとっても正直退屈なアルバムで、ボン・ジョヴィ熱は冷めていくのである。

そして、運命の3枚目のアルバムが『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ(Slippery When Wet)』。ボン・ジョヴィNo.1アルバムはこれだ! と僕がお勧めするアルバムだ。ボン・ジョヴィは1986年に発売されたこのアルバムで、一発屋の汚名を返上することに成功する。

このアルバムは、彼らにとって初となる全米ビルボードチャート1位を獲得しただけでなく、なんと8週間1位をキープする。アメリカで1,200万枚、全世界では2,800万枚をセールスしたこのアルバムによって、ボン・ジョヴィの名前は本当の意味で世界に知れ渡ることになったのだ。

このアルバムの完成度は実に素晴らしい。僕のボン・ジョヴィ熱もここに復活。シングルカットされ、こちらも全米ビルボードシングルチャート1位になった「禁じられた愛(You Give Love A Bad Name)」と「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」だけでなく、全ての楽曲が実に良くできている。今聴いてもまったく色褪せない、1980年代のHR / HMシーンを代表する名盤と言っていい。

しばらくボン・ジョヴィから遠ざかっている方、是非このアルバムを聴き直してみて欲しい。かつての名盤をふと思い出すことが出来る、これもRe:minderの楽しみ方のひとつかと。

最後に、このアルバムのアートワークの話。女性の服にアルバムタイトルがデザインされているのが日本盤。これをメンバーが気に入らず、水をかけられたゴミ袋にジョンが指で “Slippery When Wet” と書いたものが海外盤。皆さん知ってました?

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※2017年7月15日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 藤澤一雅

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