「村上スタイルで使い続けていれば…」燕OBも“放出”惜しむ廣岡大志の将来性

ヤクルトから巨人にトレード移籍した廣岡大志【写真:荒川祐史】

ヤクルトコーチ時代に廣岡を間近で見ていた野口寿浩氏

巨人の田口麗斗投手とヤクルトの廣岡大志内野手との交換トレードが1日に発表され、球界を注目を集めた。2人にとっては、3月26日のシーズン開幕まで1か月を切る中での電撃移籍に。若手有望株と引き換えに、先発陣の補強を図ったヤクルト。球団OBからは、廣岡の放出を残念がる声も出ている。

2015年のドラフトで2位指名を受けて智弁学園から入団した廣岡。1年目の2016年にはセ・リーグの高卒新人野手では56年ぶりとなる初打席初本塁打をマークし、鮮烈な印象を刻んだ。4年目の2019年には自己最多の91試合に出場し、初の2桁となる10本塁打を記録。昨季は外野でも出場したが、代打などが中心となり87試合出場にとどまっていた。

「大志を出すんだ……とは思いましたね」。そう語るのは、ヤクルトOBであり、日本ハムや阪神、横浜(現DeNA)でも通算21年にわたって捕手として活躍した野口寿浩氏。2017年から2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務め、廣岡の持つポテンシャルを間近で感じてきた。

「飛ばす力がある、足は速い、肩は強い。持ってるものは抜群でした。間違いなくトッププロスペクトのひとりでしたね」

球団フロントも、いの一番に廣岡の名前を挙げて「早く一人前に」と求めていたという。そんな“強化指定選手”を手放したことに、OBのひとりとして「ちょっと残念な気持ちもあります」と語る。

主砲・村上は失策数や三振数に目をつぶり2年目に全試合出場でブレーク

廣岡は今季でプロ6年目。同じ高卒の山田哲人が4年目でブレークしたのを考えると、もう1、2年前に台頭してほしかったというのが球団の本音かもしれない。ただ野口氏は、覚醒させる環境を作ってあげるべきだったとも言う。

「もう1、2年早く我慢して使い続けておくべきだったのかなと。“村上スタイル”で、少々のことは目をつぶって使い続けていれば、一気に花開いた可能性も高かったと思います」

主砲に成長した村上宗隆は、プロ2年目の2019年に全143試合に出場。一塁や三塁で計15失策を記録し、リーグ記録を更新する184三振を喫したものの、36本塁打96打点をマークして新人王を獲得した。昨季も全120試合出場で28本塁打、86打点と主力として台頭した。

“使いながら育てる”のは我慢が必要。だが、実った時の見返りは大きい。加えて、ここ2年間のペナントレースではシーズンの比較的早い段階でリーグ下位に低迷。「未来を見据えた起用に舵を切ることもできたのでは」と野口氏は推し量る。

それでも廣岡にとっては、きっかけを掴むチャンスにもなるトレード。巨人には、2018年から2年間指導を受けた石井琢朗氏が1軍野手総合コーチとしている。さらに、主砲の岡本和真は智弁学園の1学年上で、馴染みやすい環境でもありそうだ。

「望まれていくわけなので、このトレードを前向きに受け入れてほしいですね。巨人としては、坂本勇人の次の打者が欲しいとなったときに、将来的に夢のある大志だったのでしょう」。そうエールを送った野口氏。未完の大器は、新天地で開花の時を迎えるか――。(Full-Count編集部)

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