転職で人生は大きく変わるのか?「恵まれた職場」を捨てる危険性

転職は人生にとって大きな影響を与えるものですが、これまで何十人もの「転職をしたいのですが……」という若者からの相談を受けた身としては「転職ってそこまであなたの人生を変えませんよ?」と思うこともあります。


転職の本質

人生を変えるのは、「会社を変える」ということではなく「生き方を変える」ということなのです。所詮、「転職」の多くは、「給料が100万円上がりました!」やら「各種手当が充実しています!」程度のもの。

だとしたら、会社を変えても人生はそこまでドラスティックには変わりません。むしろ「フリーになる」やら「妻に頼ってオレは専業主夫になる」といった変化の方が人生はよっぽど変わってくれることでしょう。そして、ドラスティックに変えることは人生の幅を広げてくれます。そうした経験を経たうえで、また元々やっていた形の就労体系に戻るも良しだし、完全に人生を変えるのも良し、でしょう。

正直、サラリーマン(会社員・公務員)で生きていくことを決めた人にとっては、「職場を変えれば幸せが待っている・給料が上がる!」と思わない方が良いでしょう。よっぽど能力の高い人以外、転職をすると給料は下がるものです。私の知り合いでも、マスコミ業界でこんな感じで次々に給料が下がった人物がいます。「大メディアでぬるま湯に浸かっているのはどうかと思う……」という感覚で転職をしたのです。

大手出版社

スポーツ新聞社

夕刊紙

中堅出版社

フリーペーパー発行社

最初の大手出版社にいれば、50代前半の今、年収800万円ほどには行っていただろうに、現在は500万円台です。

若者というものは、どこかで「ここはぬるま湯であり、私がい続ける場所ではない!」と思ったり「私の給料は高すぎる! これは社会の格差を拡大するだけである。私はここから出なくてはいけない! 正しい報道を私はするのだ!」のように「社会派」に転じ、恵まれた職場を捨ててしまうこともあります。

鉄道会社を捨てた男の末路

最近ツイッターで話題になったのが、鉄道会社に勤めていたものの、コロナで将来が不安になり、手に職をつけようとプログラマーに転身しようとした人物です。結局同氏はスクールの授業料に80万円を使った挙句プログラマーではなく営業にさせられ、年収が300万円下がったといいます。「つまらないけれどミスなく運転して600万もらえる仕事を続けてればよかった 本当にしんどい」とツイートし、「鉄道会社は辞めるな君」として日々ツイートを続けています。その後は「今の職場は正直当たりだった気がする 1人でも良い人がいるとかなり仕事しやすくなるから本当によかった バリバリやっていくしかないな」と述べており、吹っ切れたようなのが救いです。

しかし、両人とも「大人の中二病」みたいなもので、結婚をし、子供を養う、といった状況になるのであれば無駄な「気の迷い」でしかないようにも思えます。

全国各地の知事や政治家が「地元が大事」などとアピールしていますが、それについて「都会の方が機会がある」やら「地元に留めるための妄言」などと言いたくなるかもしれません。実際、地元に残って着実な仕事をした方が幸せになる場合は多いと私は考えています。

というのも、私は2020年10月31日をもって東京を捨てて佐賀県唐津市に引っ越したからです。東京でこれ以上競争する必要もないと考えたからですが、正直、47歳の自分にとっては唐津の方が心地よいです。もちろん、若いうちは競争が激しい都会で自分自身が少しずつステップアップしていく様を実感するのが良いでしょう。或いはドカーンと上がる可能性もあります。

しかし、こうした経験ができる人間などせいぜい10%程ではないでしょうか。大多数はこうした「いい思い」はしないものです。賭けに打って出た場合は多くは失敗しがちです。そんな時に「堅実な人生を送ったあなたがやっぱり羨ましかった……」となってしまいます。

転職をするという決断をした人はこのように少数の「転職をした結果、人生が上向いた!」とフェイスブック等で殊更に強がりながらアピールする人間のセルフプロデュース力にまんまと乗っかってしまった面も時にあるので注意が必要です。

だから私が言いたいのは「周囲の転職・ステップアップアピールに流されないでくださいね」ということです。今いる会社が苦痛でないのであれば、別にやめる必要はなく、苦痛になったり、たまたま知り合いから「とんでもなくおいしい仕事が来た!」という時に人生を変えても十分幸せになれるのではないでしょうか。

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