もう泥水は御免だ!! 阪神・高山の“変心”と“変身”

引き締まった体でロングティーに励む高山

阪神・高山俊外野手(27)の“変心”と“変身”に注目が集まっている。新助っ人のメル・ロハス・ジュニア外野手(30=前韓国KT)やドラフト1位ルーキー・佐藤輝明内野手(21=近大)らの加入により、今季はより厳しい立場に立たされることが予想されたが、様々な要因により開幕スタメンを狙える位置にまで再浮上。入団以来、将来を嘱望されてきた天才肌男が静かに闘志を燃やしている。

高山は春季キャンプ中に行われた実戦全11試合に出場し、チームトップの打率4割2分9厘をマーク。矢野監督も「野球に対する姿勢であったり、野球に対して本気になった。高山がこの何年かで変わってきたところが、このキャンプで数字になって表れてきた」と高く評価した上で今キャンプの野手部門MVPに選出。ルーキーイヤーの2016年に136安打をマークし、セ新人王にも輝いた天才ヒットマンへの期待を改めて口にした。

だが、当の高山は「僕の中ではまだ競争が始まったような感覚もない。主力も試合に出ていない中、自分が出してもらえただけ。ベテランや外国人選手が調整段階に入れば必然的に(自分の)出番は後になる。自分は立場的に苦しいところにいるので」と、かぶとの緒を緩めようとはしない。

というのも、高山は昨年の春季キャンプでもMVPに選出されたが、新型コロナ禍による開幕延期の影響もあり、昨季公式戦ではキャリア最低の42試合出場、打率1割5分2厘に終わってしまった。「それだけに今年は何としても昨年と同じ轍を踏みたくないといった強い意志が見て取れる」と球団関係者も語る。

高山の変化を強く感じ取っているのは井上ヘッドも同様だ。4日に甲子園で行われた全体練習終了後「きょうもたまたまウエートトレーニング場で(高山と)会ったんだけど」とした上で「裸になって体重測定してたんだけど、ものすごく体が締まっていたんだよね。『お前痩せたな』って聞いたら『締めました。自分の中で考えて』って言葉を聞いて、こいつちょっと違うなと。本気度をそのひと言で感じた。去年のふがいない思いをどう取り返すか自分なりに考えたんだろうね」。

定位置争いの強力なライバルと目されてきたロハスは政府による緊急事態宣言延長によりさらなる来日遅れが確定的。佐藤輝も三塁での起用が増えてくるなど高山にとっては“追い風”も吹いてきた。そんな今だからこそ、高山は油断した姿勢を一切見せようとしない。

日大三高―明大と野球エリートコースを歩んできた天才肌。泥水はもう、十分すぎるほど飲んできた。復権と真の覚醒へ、今度の今度こそ期待してよさそうだ。

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