【宮日紙面診断】JA全国女性組織協議会副会長 永倉智子 男女平等意識広げて

 東京で会議があり、悩んだ末に上京した。新型コロナウイルスの影響で飛行機の便数が少なく、おまけに帰りの便が九州地方の強風によって欠航となり、もう1泊することを余儀なくされた。コロナウイルスと天候という自然の恐ろしさをつくづく思い知らされた。

 プロ野球6球団が1日、県内で春季キャンプに入った。例年なら歓声に包まれ、球春を迎えるはずが、コロナ対策で無観客でのキャンプ。球場に足を運べないファンや県民のために紙面では連日、練習の様子や選手への応援メッセージが掲載された。球場に行けずとも、県民で一緒に応援している気持ちになった。

 2月は、宮日総合美術展と県美術展を統合した新公募展「みやざき総合美術展」が県立美術館で開かれた。10~22日に「特選紙上展」と特集面で、特選と準特選に輝いた作品、受賞者のコメント、審査評が紹介された。

 受賞者の「コロナ禍で逃げ場のない、苦しい社会だが、それでも進んでいけるという思いを込めた」というコメントからは、「とどまっていない」「前に動いている」という強い気持ちを受け取れた。素晴らしい芸術家がこんなに多く宮崎におられるんだとワクワクしながら、見事な芸術作品を紙面で鑑賞できた。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)が、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言したことが4日に報じられた。女性参画推進の流れに逆行する蔑視発言にもかかわらず、比較的小さな記事だった。失言癖のある森氏のこととはいえ、もっと敏感に反応してほしかった。世界を巻き込んでの問題に発展したことからも、ここは指摘しておきたい。

 7日の紙面は、各自治体が設置する地方防災会議で、国が2020年の目標としていた「女性委員の比率30%」を達成したのは全国でわずか2%弱だと伝えていた。本県の女性比率は16・7%。女性参画が進んでいない一例だ。翌8日の「にっぽん診断」を読み、コロナ禍による女性の雇用悪化や家庭での負担増、自殺者の増加など性差別の深刻さを痛感した。

 21日の紙面では、新聞やテレビの現場で働く女性たちが「意思決定層に女性が少ないことが、ジェンダーに偏りのある情報発信を生んでいる」「森さんだけの問題じゃない。社会全体の意識が下支えとなっている」と変化を訴えていた。

 私たちJA全国女性組織協議会でも女性比率の目標として「正組合員30%以上、総代15%、理事15%以上」を掲げ、ジェンダー平等(SDGs目標5)や男女共同参画に取り組んでいる。

 森氏の発言や一連の報道によって、今後どのような行動、発信をすべきか問題提起されたと感じている。私たち一人一人が自ら声を上げ、男女平等の意識を広げていくことが最も効果的な方法だろう。新聞も果たすべき役割を自問してほしい。

 ながくら・ともこ 日南市南郷町出身。19年から現職。JAはまゆう女性部長、JA県女性組織協議会長。同市南郷町。63歳。

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