【東日本大震災10年】コロナ禍でも被災者〝リモート支援〟 平塚の市民団体

原発などに関する記事を掲載した会報を広げる小嶋さん=平塚市南金目

 東日本大震災の被災者と交流を続ける神奈川県平塚市の市民団体「福島の親子とともに・平塚」が、新型コロナウイルスが感染拡大する中で“リモート支援”に取り組んでいる。これまで同市に被災者を招待してきたが休止を余儀なくされ、金銭的な援助や原発に関する情報提供などに注力する。震災発生から10年。なおも心の傷を癒やせずにいる被災者に寄り添い続ける。

 市民団体は、元教員の小嶋倫子さん(71)が代表を務め、元同僚ら約20人が活動する。2012年夏、小嶋さんが自宅近くの平屋を借り、インターネット上の被災者支援サイトを通じて福島県の3家族11人を招いたのが始まりだ。昨年1月までに23回実施し、延べ100家族386人を招待した。活動資金は会費や寄付などで賄っている。

 昨春から感染が広がり、こうした保養支援活動を休止。それでも、感染者が少ない地域での保養を希望する被災者の声を聞き、交流を続ける6家族28人に対して1人5千円を援助し、福島県の温泉街などで憩いの時間を過ごしてもらった。

 人々を分断するコロナ禍に直面しながらも支援活動を続けるのは、被災者が現在も不安や苦しみを抱えていると痛感するからだ。被災者の現状を知ろうと、昨年12月にアンケートを実施し、小嶋さんは被災者が胸奥にしまい込む悲痛な思いに触れた。

 「あの日の出来事は夢だったのかと、めまいの中にいるようだ。一つ一つ思い出せば涙もにじむ」

 「10年もたつのに何が解決したのだろうかという疑問と、それを口にしてはいけない雰囲気を感じる」

 保養に招待した家族が放射能汚染を心配することなく笑顔で過ごす様子を見てきた小嶋さんだが、「復興、復興と声高に叫ばれる中で、被災者の心は置き去りにされている。胸が張り裂けそうになった」と話す。

 アンケートでは原発政策についても問うた。反対の声が多かったものの、是非を決めかねている被災者が一定数いることが分かった。「判断するための情報が不足している」と小嶋さんは指摘する。今後は被災者に送っている会報を通じて、原発に賛否双方の立場の専門家の意見などを伝え、共に考えていくつもりだ。

 「10年の節目というと、震災が過去のように聞こえる。でも、被災者にとっては今も続いていて、懸命に闘っている」と小嶋さん。「子どもや孫の代まで震災の傷を残さないよう、体力が続く限り支援したい」と決意を新たにする。

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