“佐藤輝世代”定着なるか? 虎の怪物新人が目指すのは「98年度生まれ」のトップランナー

売り出し中の阪神のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明内野手(21=近大)がまた魅せた。「5番・三塁」で出場した10日のオープン戦・広島戦(甲子園)は2号2ランを含む3打数3安打の大暴れ。快音を連発する虎の黄金新人には、1998年度生まれ世代のトップランナーに君臨しそうなオーラが早くも漂っている。

5回二死二塁で迎えた第3打席だ。広島・スコットの145キロ直球を聖地の左翼席へ突き刺した。記念すべき“甲子園初本塁打”に「しっかり捉えることができました。阪神ファンの皆さんの前で打った1本は、特別な1本になったと思います」と満面の笑みでダイアモンドを回った。

これでオープン戦5試合で、チームトップタイの2本塁打。矢野燿大監督(52)も「いいホームランだったけど…輝自身も目指すのは、もっと上の(レベルの)ところにあると思う」と振り返るなど評価は期待から信頼にかわりつつある。

そんな大物新人は週末13日で22歳の誕生日を迎える。野手ナンバーワンの呼び声に相応しく、オープン戦から初打席初本塁打、本拠地・甲子園初打席で適時打を放つなど“ここ一番”は外さないスター性はやはりもって生まれたものがある。「××世代」とネーミングされる“称号”も今年中に手に入れることも夢ではなさそうだ。

1999年3月の早生まれでもある佐藤輝は、プロでは高卒5年目となる98年4月~99年3月生まれまでのいわゆる「98年度生まれ」に該当。高卒入団組で言えばプロ5年目の選手がそれに該当するが、そんな98年度組の選手のなかで球界を代表するレベルにまでブレークしたのはオリックス・山本由伸ぐらい。高校時代に甲子園を沸かせた今井達也(西武)や藤島健人(中日)、寺島成輝(ヤクルト)など鳴り物入りで入団した「甲子園組」の選手たちはプロ入り後に伸び悩んでいる現状に加え、野球の華でもある本塁打を描ける天性「アーチスト」で現在、一軍に定着を果たしている選手は皆無。今年の活躍次第で2000年2月生まれの「99年度組」でブレークしたヤクルト・村上宗隆のように瞬く間に世代ナンバーワンの存在に上り詰める可能性は十分だ。

他の競技の98年度生まれでは女子ゴルフの「黄金世代」が有名。世界レベルでも勝利を挙げている畑岡奈紗や渋野日向子を筆頭に国内にも原英莉花、小祝さくら、勝みなみなど20代前半ながら、ツアーで複数勝利を挙げている実力者がズラリ。「黄金」の由来はそんな強者揃いの世代を例えてのものだ。球界でも古くは67年度生まれの桑田・清原の「KK世代」や80年度生まれの「松坂世代」など、一度名づけられた呼称はその後も未来永劫ともいえるレベルで該当世代を指す“固有名詞”として使用されることが多い。

まださほどスポットライトが当たっていない「98年度生まれ」のトップランナーを目指す志はプロに入った以上、本人も当然、胸の内に秘めている部分でもある。飛ぶ鳥を落とす勢いの怪物新人の名が同世代の“代名詞”となる日は、そう遠くはなさそうだ。

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