フェリー可動橋修繕、供用再開 車両乗り降り可能に 佐世保港鯨瀬

供用が再開された佐世保港鯨瀬の可動橋=佐世保市新港町

 長崎県佐世保市の佐世保港鯨瀬の可動橋が修繕を終え、10日、供用を再開した。昨年12月に起きたフェリーの接触事故で、佐世保と離島を結ぶフェリーから車両が乗り降りできない状態が続いていた。関係者からは安堵(あんど)の声が聞かれた。
 事故は昨年12月21日夜に発生。佐世保港鯨瀬に到着した九州商船のフェリー「なみじ」が操縦ミスで桟橋の可動橋に接触し、一部がへこむなどした。佐世保港は、佐世保と有川、小値賀、宇久平を結ぶ定期便が1日4便就航している。事故後、旅客の乗降はできたが、車両の乗り降りができなくなった。
 同社のグループ会社、九商コーポレーション(佐世保市)はフェリーへの荷物の積み込みを担当。普段、卵(1日300キロ前後)や青果物、建築資材などをトラックで運搬していたが、事故の影響で手作業に切り替えた。ただ出港が30分以上遅れることもあり、社員も疲弊していった。

 苦しい状況を知った全日本港湾労働組合九州地方県支部の小野圭一朗執行委員長は、運輸会社からクレーンを借り、市の協力も得て1月12日に桟橋に導入。社員の負担軽減につながり、出港時間の遅延も解消された。小野委員長は「船での運搬は離島の大切なライフライン。物流を止めないようにしなければと思った」と振り返る。
 宇久島から本土へのごみの搬入や畜産牛の移動にも影響は及んだ。市は、博多港行きフェリーや長崎市の畝刈港行き貨物船にごみ運搬車を載せ、それぞれ陸路で佐世保市内に運ぶ措置を取った。宇久地区和牛部会部会長の西尾政喜さん(61)は、貨物船で牛を平戸の市場まで運んだ。夜間の長距離移動となるため、「牛への負担も大きかった」という。
 佐世保港鯨瀬では10日、大型トラックが可動橋を利用して次々とフェリーに入る光景が見られた。西尾さんは「安堵した。今回のようなことが起きないよう、佐世保港には別の桟橋を用意するなどの備えをしてほしい」と話した。
 九州商船は「ご迷惑をおかけして申し訳ない。今後事故のないように努力したい」としている。

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