名捕手・モリーナの「盗塁抑止力」 MLB公式サイトが特集

日本時間3月12日、あるツイートが話題となった。メジャーリーグの記録を扱うアカウント(@MLBStats)が2004~20年の17年間で許した盗塁数が少ないトップ5球団を紹介したのだ。そのツイートによると、1位はカージナルスの847盗塁。2位のダイヤモンドバックスは1250盗塁であり、実に403もの大差がついている。これを受けて、メジャーリーグ公式サイトではアンドリュー・サイモンがヤディアー・モリーナの驚異的な「盗塁抑止力」について特集している。

モリーナがメジャーデビューしたのは2004年6月(当時21歳)。よって、冒頭で紹介したツイートはモリーナのデビューイヤーからの17年間の数字を合計したものとなる。1位と2位の差は403だが、これは2位と25位(エンゼルス)の差よりも大きい。カージナルスの数字だけが突出しているのだ。

ちなみに、カージナルスの情報を扱う「Viva El Birdos」というブログでは許した盗塁の数ではなく、盗塁の被企図数(許盗塁と盗塁刺の合計数)で同様の集計を行っているが、カージナルスがダントツという結果に変わりはない。累積の被企図数の伸びは年々鈍化しており、各球団がモリーナを相手に盗塁を試みなくなっていることが示されている。

サイモンは1916年以降を対象として「17年間の許盗塁の合計の2位との差」についてベスト5を紹介。その結果は以下のようになっている。

1 2004-2020年カージナルス(2位との差403)
2 1990-2006年レンジャーズ(同205)
3 1918-1934年セネタース(同201)
4 1973-1989年ヤンキース(同174)
5 1957-1973年ヤンキース(同164)

なお、期間が重複するものや、17年間の全てに参加していないエクスパンション球団は対象外となっている(ただし、4位と5位のヤンキースは重複期間が1年のみのため、例外としてランクイン)。サイモンによると、期間が重複するものを対象外としなければ、1位から8位までが全てカージナルスになってしまうという(1997-2013年までさかのぼっても1990-2006年レンジャーズを上回る)。

1990-2006年レンジャーズは主にイバン・ロドリゲスが正捕手を務めていた時期に該当する。歴代屈指の強肩で知られ、捕手史上最多となる13度のゴールドグラブ賞を受賞しているロドリゲスだが、モリーナが正捕手を務めた期間のカージナルスはそのレンジャーズに2倍近い差をつけているのだ。

もちろん、カージナルスの投手陣が優秀だったことも忘れてはならない。2004年以降、カージナルスの投手陣が許した出塁数はメジャーで3番目に少ない。出塁できなければ盗塁することもできないため、カージナルスの投手陣が許した出塁の少なさが許盗塁の少なさに寄与していることは間違いない。とはいえ、それだけでは説明がつかないほど許盗塁が圧倒的に少ないのも事実である。

次に「数」ではなく「率」に着目してみよう。サイモンは「2004年以降の被盗塁成功率」についてベスト5を紹介。ここでもカージナルスは1位になっている。

1 カージナルス(64.4%)
2 タイガース(68.4%)
3 レッズ(68.9%)
4 ダイヤモンドバックス(69.0%)
5 ロイヤルズ(69.4%)
※メジャー平均は72.4%

モリーナの通算盗塁阻止率は40.3%のため、走者はモリーナに対して59.7%しか盗塁に成功していないことになる。上記の数字からモリーナの数字を除くと、カージナルスの被盗塁成功率は73.4%となり、メジャー平均を超えてしまう。モリーナの偉大さを示す数字の1つと言えるだろう。

モリーナは単純に肩が強いだけでなく、常に走者の動きを確認し、場合によっては鋭い牽制球を投じ、走者に全く隙を見せない。そうやって走者を塁に釘付けにすることにより、盗塁を試みる機会自体を奪ってしまうのだ。マイク・シルト監督は「モリーナを相手に走者が走る可能性は高くない。走ったとしても成功率は高くない」とモリーナの「盗塁抑止力」を絶賛している。

今年7月に39歳の誕生日を迎えるモリーナだが、依然としてその存在は他球団の選手(特に走者)にとって大きな脅威となっている。10度目のオールスター・ゲーム選出やゴールドグラブ賞受賞は難しいかもしれないが、今季もカージナルスの大黒柱として君臨するに違いない。今季は何人の走者がモリーナに挑み、モリーナの偉大さを身をもって知ることになるのだろうか。

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