【高校野球】「スピードに興味ない」21世紀枠・東播磨の144キロ右腕がドラ1候補から学んだこと

東播磨・鈴木悠仁【写真:荒川祐史】

昨秋の公式戦では10試合中、8試合で完投した東播磨のエース・鈴木悠仁

21世紀枠で今春の選抜大会に出場する東播磨(兵庫)の大黒柱は最速144キロの直球を誇るエース・鈴木悠仁投手だ。公式戦の防御率1.10を誇る右腕は「自分は本当に負けず嫌いなので絶対に負けたくない」と初戦の明豊戦に向け闘志を燃やしている。【橋本健吾】

小学時代はソフトボールで全国大会に出場すると、中学は地元・魚住中学の軟式野球部に所属。だが、1年生で右踵の手術、2年には右手中指を骨折、3年にも右足の肉離れと怪我が相次ぎ、思ったようなプレーをすることができなかった。

「野球をやっている時間よりも怪我の方が多かった。高校に入ってから初めて『野球をやってる』と感じることができました」

高校入学後は体つくりを一から見つめ直し昨秋から背番号「1」を背負った。昨秋の公式戦では10試合中、8試合に完投。80回1/3を投げ被安打54、77奪三振、10失点、防御率1.01と選抜出場校の中でもトップクラスの成績を残している。

昨年までの最速は142キロだったが、「上半身、下半身のトレーニングの成果が出た」と、一冬を越え2キロアップの最速144キロをマーク。変化球もスライダー、カーブ、フォークを操るタフネス右腕は「投手戦になるほど集中力は上がる。スピードには興味がないのでチームが勝てる投球をしたい」と意気込む。

市立和歌山の小園と投げ合い「投げミスをしないコントロール、そこを学びました」

昨年秋の近畿大会では初戦でドラフト1位候補に名前も挙がる小園健太投手を擁する市立和歌山を相手に1-2で惜敗。7安打2失点の完投も「小園君から学ぶことがたくさんあったし差を感じた」と反省。制球力の重要性を改めて感じたようで「投げミスをしないコントロール、そこを学びました」と、好敵手から学んだことを生かし甲子園ではレベルアップした投球を見せつけるつもりだ。

投球のスタイルは楽天に8年ぶりに復帰した田中将大投手が試合の勝負所で見せる“ギアチェンジ”を参考。「得点圏で点を取れないところが凄い。自分の投げる試合は接戦になるので勝敗を左右する場面ではより集中力を高めていきたい」と、力を込める。

初戦の相手は九州大会ベスト4で3年連続出場の明豊(大分)に決まった。

「明豊さんは総合力も高いし強いチームですが、相手は関係ない。自分は本当に負けず嫌いなので絶対に負けたくない。点をやらずにチームに流れを呼び込む投球をしたい。次の取材は試合に勝った時ですね、お願いします!」

マウンドを譲るつもりはない。怪我に泣いた“空白の3年間”を経て、充実感を漂わせる東播磨のエース・鈴木が聖地のマウンドに立つ。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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