緊急事態宣言解除でGW明けには「新規感染者2000人超え」 専門家警鐘

宣言解除を決めた菅首相

政府は15日、21日に期限が迫っている埼玉、東京、千葉、神奈川の4都県に対する新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言について、解除する方向で検討に入った。18日にも対策本部を開いて決定する見込み。しかし、東京都では7日間連続して新規感染者数が前の週の同じ曜日を上回るなど微増傾向に転じている状況での解除に、専門家は「第4波襲来危機」を指摘する。

もともと緊急事態宣言が4都県で2週間再延長された理由は病床使用率の高さだったが、政府関係者は「感染状況は下げ止まったが、病床使用率は下がってきた」として21日に解除する方向で検討に入ったという。

しかし、東京都が発表した新規感染者数は、15日まで7日連続で前の週の同じ曜日を上回り、下げ止まりどころか微増に転じている状況だ。これまでの経験から、病床使用率と感染者数の増減にタイムラグがあるのは明らかで、ある医療関係者も「再び病床使用率が上がってくる可能性は高いのに…」と解除には反対の姿勢だ。

すでに街には人があふれ、東京・渋谷のスクランブル交差点は平時と変わらない混雑ぶり。花見や歓送迎会シーズンへと突入するこの時期に緊急事態宣言の解除が重なれば、人出に拍車がかかりかねない。医学博士で防災危機管理アドバイザーの古本尚樹氏も、「第4波の危機」と警鐘を鳴らす。

「緊急事態宣言にこれ以上の感染者数を減らす効果は見込めないが、急激に増やさない効果は続いている。国民がワクチン接種するまでの時間稼ぎにはなったはず。しかし、今、解除となれば一気に人出が増えてリバウンドするのは確実。ゴールデンウイーク明けくらいに1日当たり1500~2000人くらいの新規感染者が出る第4波を引き起こしかねない」

東京で1月7日に過去最多となる2520人の新規感染者を出した時は、11月上旬から新規感染者数が微増に転じ、約2か月で第3波のピークを迎えた。現在再び微増に転じた東京が、ワクチン接種の浸透に加えて季節が冬から春に変わる状況があるとはいえ、約2か月後のゴールデンウイーク明けに第4波のピークを迎える可能性は十分に現実的だ。

しかも、第4波は第3波とはだいぶ様相が違ったものになりそうだ。

「すでに新型コロナは変異株が入ってきて、第4波の主流は変異株になる。変異株の恐ろしさは感染力が高い上に、ようやく接種が始まったワクチンの効果が限定されるかもしれないこと。一回広まると手が付けられなくなり、これまでの緊急事態宣言では止められない。より強い措置、欧米並みのロックダウンが必要になり、経済へのダメージは計り知れない。だからこそ、今、第4波の芽を摘むべき」(古本氏)

同氏によれば、変異株は同じコロナウイルスという総称でも、これまでの新型コロナとは別物で、さらに複数の変異株を同時に罹患することもあり得るという。その場合、重症化リスクも高まるといい、医療体制に負担がかかることは必至だ。

政府は緊急事態宣言を解除後は、都道府県単位から市区町村単位で集中対策が可能になる「まん延防止等重点措置」に移行する考えだが、古本氏は「市区町村単位に細かく対応することで経済的損失は小さくなるかもしれないが、感染者を減らす効果は期待できない」と懐疑的だ。

各種世論調査では国民の多数が解除に反対しているが、果たしてどうなるか――。

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