「首都感染」著者・高嶋哲夫氏が提言 東京集中でワクチン接種を!

持論を述べた高嶋氏

1都3県に出されている緊急事態宣言は21日が期限だが、新型コロナウイルスの新規感染者数は下げ止まりが続く。地域によっては再上昇に転じているところもあり、第4波がヒシヒシと迫っている感すらある。そんな現状を小説「首都感染」の著者である作家の高嶋哲夫氏(71)が分析。菅義偉首相(72)に“ワクチン東京集中接種”の決断を迫った。

東京都は14日、新型コロナウイルスの感染者が新たに239人報告されたと明らかにした。直近7日間の1日当たり平均は279・1人となり、前週比で109・8%となった。70~80代の感染者3人の死亡も確認され、死者累計は1580人となった。

都の担当者は「急激に増加傾向に入っているわけではないが、このところ下げ止まり感が強くなっている。できる対策をとにかく継続してほしい」と述べた。

感染は全国的に下げ止まって微増に転じており、いつ第4波襲来となってもおかしくないともいえる。

コロナ禍からの脱却に向け“ゲームチェンジャー”として期待されるのがワクチンだ。現在、医療関係者への接種が行われ、来月中旬からは高齢者にも対象が広がる。

2010年に発表した「首都感染」の内容がコロナ禍と酷似することから“予言の書”と話題になった高嶋氏はこう提唱する。

「地方なんて新規感染者ゼロの県もある。しかも、行き渡るワクチンの量やタイミング、保管期間、会場や医療関係者の確保の問題もあって、地方では高齢者の集団接種も難しいという現実がある。コロナで大変なのは基本的に首都圏とせいぜい大阪なんです。そこから移動する人が全国に広めていく。だったら、今からでも遅くはない。国は確保できたと言っている高齢者用3600万人分を、とにかく首都圏のすべての対象者に優先的に打って抑え込むべきなんです」

優先順位が低い若者などがいつ接種できるかははっきりしない。やっとワクチンが打てるとなった時には、早期に接種した人は抗体がなくなっているかもしれず、ワクチンの効かない変異型が広まってしまう可能性も考えられる。そうなる前に感染の中心地である首都圏の接種対象者全員にワクチンを打って抑え込み、そこから地方へと接種を広げるのが最も効率もいいし、効果もあるというワケだ。

しかし、高嶋氏は「いろんな政治家の方にも言ったんだけど反論された。要は『政治的に無理』だと。平等ということを考えると、東京だけではなく日本全国平等にやらないとダメだそうだ」と明かす。

政治が決断を下せない時こそ専門家に期待が集まるが、「尾身(茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長)さんとか知識人がきちんと言うべきなんだけど、基本的に3密を避けて移動するなとしか言っていない。『東京集中でワクチン接種しろ』なんて思いつかないのかもしれない。“8割おじさん(西浦博・京都大教授)”なら、すぐに効果も計算できるはずなのに」と嘆く。

感染の拡大・減少の波に揺られ、効果的な対策が打てないまま、経済的損失ばかりが積み重なっていく。

「感染力もたいしたことないし、僕は去年の暮れくらいに終息すると思っていたが、ダラダラきている。ワクチンを打てば大丈夫と思ったら、数が足りないとか言ってる。だったら、東京集中で抑え込めと言ったら、平等がどうとかいう。国と専門家といわれる人がバカをやっている間に、どんどんひどくなってる気がしている。日本には情報も知識もあるはず。それを使う知恵がないんですよ。変異種も広がり始めてるし、残されている時間は少ない」と高嶋氏。

「首都感染」でも、感染の抑制とワクチン開発において、政治決断がいかに重要かを記しており、「本当にコロナを抑え込みたいという切なる願いがあるなら、菅義偉首相が『東京・首都圏に集中してやらせてください』と覚悟を決めて政治力を発揮する。そうすればコロナ禍も終わりが見えると思う」と決断を迫った。

菅首相が高嶋氏の提言を採用することはあるのだろうか。

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