大崎、初の甲子園「夢の続きは夏に」 アルプス席から800人の拍手

熱戦を繰り広げた大崎の選手たちを拍手でたたえるスタンドの保護者や地元住民ら=甲子園球場

 選抜高校野球大会に県立大崎高(西海市大島町)が登場した22日、甲子園球場(兵庫県西宮市)のアルプス席では野球部員やOB、保護者、後援会員ら約800人がマスク越しに熱く応援した。少子高齢化に歯止めがかからない小さな島から“でっかい夢”の甲子園にたどり着き、最後までひた向きなプレーを見せた選手たち。「夢の続きは夏に」-。勝利には一歩届かなかったが、スタンドから惜しみない拍手が送られた。
 大崎高は創部間もない1962年夏、長崎と佐賀各県上位2校で1枠の全国切符を争う西九州大会決勝まで進んだ。当時1年生部員だった石川数之さん(74)=東京都墨田区=は「母校を甲子園で応援できる日がくるとは…。県内の選手だけで頑張っているのも誇らしい」と聖地の重みをかみしめた。
 チームは2018年春に清水央彦監督(50)が就任して以降、躍進を遂げた。80年代にコーチ、監督を務めた松井利明OB会副会長(60)はアルプス席で元チームメートと再会。「野球部が強くなってから、九州大会などで懐かしい顔に会う。子どもたちが引き合わせてくれた」。既に卒業式を終えた3年生は約10人がアルプスで観戦。県内公式戦無敗だった昨季、遊撃手として活躍した山口留稀哉さん(18)は「今までずっと一緒に生活していたやつらが甲子園でプレーするのを見たら、胸がじんとした。弱気にならず、思い切ってやってほしい」と熱い視線を送った。
 これまで、行政と住民の後押しが大きな力となってきた。この日も二回の校歌演奏時に、チームカラーの青色のタオルを掲げるなど選手たちに力強くエール。清水監督が14年に市職員として採用された当時の市長、田中隆一さん(74)は「想像以上に早く結果を出してくれた。彼らは地域の希望」と健闘をたたえた。
 島からの挑戦は1点差の惜敗でいったん幕を閉じた。後援会理事の宮本雄介さん(33)は「甲子園に出るだけで満足するチームではない。必ずリベンジを」。この試合、9回2失点と踏ん張ったエース坂本安司投手(17)の母さくらさん(46)も「小さなころからの夢がかなってすごい。地元の方や3年生のために、と勝ち取った甲子園。また強くなって夏に戻ってきてほしい」と願いを込めていた。

 


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