PANTAのレゲエに一発ノックアウト!渋谷陽一「サウンドストリート」での出会い 1979年 3月25日 PANTA&HALのアルバム「マラッカ」がリリースされた日

「サウンドストリート」から流れてきたPANTA&HALのレゲエアレンジ

「こんばんは、渋谷陽一です」

―― の挨拶で始まるラジオ番組『サウンドストリート』(NHK-FM)。

当時、高校生の僕にとって新しい音楽に触れることができる貴重な番組だった。この番組は平日の夜に放送されていて、曜日ごとにパーソナリティーが替わり、僕が聞いていたのは渋谷陽一が担当する木曜と金曜。テレビや他のラジオ番組ではあまり流れることがない楽曲が聴ける数少ない音楽情報番組だった。

インターネットもなければ、レコード屋に行ってもCDの試聴機のようなものもない時代。新しい音楽を聴くには地元の小さいレコード屋に通って店員と仲良くなりレコードをかけてもらうのが僕のテクニックだったりした。でもそれにも限度があるし、そもそも僕が聴きたいレコードは入荷すらしていないことが多かった。

『サウンドストリート』は、名前は知っていても曲を聴いたことがないバンドや、それまで全く知らなかった音楽との出会いがあり、僕は毎週この時間を楽しみにしていた。中でもPANTA&HALの「つれなのふりや」というレゲエアレンジのナンバーが流れてきた時のことは今でも忘れられない。

不思議で気持ちいいリズムとシンプルな歌詞「つれなのふりや」

その日は日本のバンドのライブ特集で、幾つかのバンドのライブ音源を流していた。その中の一曲が「つれなのふりや」。その時まではPANTAなんて曲どころか名前も知らず、ましてやレゲエだって聴いたこともなければその存在すら知らなかった。

なんだか不思議で気持ちがいいリズム、そのリズムに乗せて「おれの声が聞こえるか」「おれの船に乗りたいか」「おれに舵をまかせるか」と問いかけるシンプルな歌詞。観客との掛け合い、「つれなのふりや」「すげなのかおや」と呪文のような言葉。一瞬にして心を鷲掴みにされ、ラジオの前でじっとしていられない気持ちになり、何か凄いことが始まりそうな、見たことがない世界が待っていそうな気がして、16歳の少年は迷うことなくPANTA丸に乗り込んだのだった。

 さぁ でかけるかSailin'

「つれなのふりや」が収録されているアルバム『マラッカ』は、日本の大動脈・オイルロードを描いた壮大なスケールの作品。半径5mの小さな世界しか知らない田舎の高校生に、目眩がするほどでっかい世界を想像させた。

発売は1979年3月。僕の80年代はこのアルバムとともに始まった。

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※2016年4月4日、2019年2月5日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: やっすぅ

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