59年の思い出に感謝 閉館の小田原市民会館で企画展・神奈川

59年の歴史を語る資料などを集めた「市民会館思い出アーカイブ隊」の市民有志=小田原市本町

 7月末で59年の歴史に幕を下ろす小田原市民会館(同市本町)の歩みを振り返る企画展「みんなの市民会館思い出展」が24日に始まった。市民有志が倉庫の奥でほこりをかぶっていた貴重な資料を発掘。9月にオープンする新施設に役目を引き継ぐが、市民らは「市民が積み重ねてきた歴史。ここが出口でもあり出発点。新しい歴史をつくっていければ」と期待を込める。28日まで。

 思い出展のうち「市民会館記録展」は市民有志でつくる「市民会館思い出アーカイブ隊」が企画。コンサートやミュージカル、歌舞伎のポスターのほか、ウィーン少年合唱団、故・市原悦子さんや四代目市川左団次さんら歴代出演者のサイン色紙など約200点を展示している。

 会館は高度経済成長期の1962年に約1400席の大ホールが完成し、尾崎豊さんやハウンド・ドッグなどの人気歌手が公演した。テレビ番組「8時だョ! 全員集合」の公開収録も70~81年に計10回が行われ、お茶の間を笑わせる舞台にもなった。

 「あの頃は名だたるビッグネームが小田原に来た」とアーカイブ隊の高橋茂樹さん(72)は振り返る。しかし、ホールの使い勝手の悪さもあり、大規模興行が主流となった80年代後半になると、きらびやかなアーティストの姿も自然と消えていった。

 それでも会館の歴史をつくったのは大物タレントではなく市井の人々。同隊の深野彰さん(72)は2012年、定年後に地域とのつながりを求めて市主催のワークショップに参加した。「仕事仕事で地域とのつながりも切れていた。会館が地域との縁をつないでくれた」

 地元出身の高橋さんにとっても30代から毎年、市民合唱団の一員としてステージに立ったなじみの舞台。「近くにあって当たり前の場所だった。今までお世話になった」と感謝する。

 会館は老朽化もあり、9月に完成する「小田原三の丸ホール」にバトンを引き継ぐ。「今までの歴史も大切にしたい」と19年秋から活動を開始した同隊。会館の倉庫に無造作に積まれた荷物の中から古い歴史をひもとく資料などを探し続けた。深野さんは「59年間の歴史の主役は市民。若い人には新ホールの歴史をつくってほしい」と願っている。

 思い出展は午前10時~午後4時(最終日は同3時)。27日には「ありがとう市民会館まつり」も開催される。入場無料。

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