【#これから私は】鎌倉で災害が起きたら 中高生が防災を身近に伝える動画発信

「防災を考えるのも、動画作りも、楽しいから続けていく」と語る橋本さん(左)、中里さん=6日、鎌倉市の由比ケ浜海岸

 防災を身近に伝え、行動するきっかけを届けようと、鎌倉から動画を発信する中高生がいる。中学3年橋本玄(はるか)さん(15)と高校2年中里海人(うみと)さん(17)。幼い頃から東日本大震災の被災地の思いを聞いてきた2人は「中高生の力を生かし、みんなで助け合って命を守る地域をつくりたい」と、2月には学生団体「玄海」を立ち上げた。

 「もしここで地震が起きたら? 建物が密集し、火災が広がる可能性があります」「避難経路を自分で見て、歩いてみてください。命を守るキーになります」。等身大の言葉で、備えの大切さを伝える橋本さん。動画の撮影と編集は中里さんが担う。

 これまでに、2019年の台風で大きな被害を受けた二階堂・浄明寺などの地域で取材した5本の動画をインターネット上で公開。住民らを取材し、鎌倉宮が敷地を避難所として開放したことや、土砂で道を寸断された民家の庭にはしごをかけ物資を運んだ経験に加え、緊急時にはかまどとして使えるベンチなど地域の備えも紹介している。

 東日本大震災の後、橋本さんは父・等さん(64)が行っていた宮城県南三陸町での支援活動の話を聞いて育った。資金を集めて東北から毎年約100人を鎌倉に招く交流イベントなどで被災者と触れ合う中、「避難訓練が役に立たなかった」「避難所では不安で眠れなかった」などの思いを知った。

 中里さんの父は、地元・七里ガ浜と地名が似ている縁で、宮城県七ケ浜町の支援と交流を続けてきた。中里さんも現地でがれきの山を目に焼き付け、同世代から祖母や友人を亡くした話を聞き、「自分はのうのうと暮らしているのに、みんな本当に大変な中にいる。震災を忘れずできることをしたい」と心に刻んだ。

 「鎌倉で災害が起きた時、大切な命を守りたい」。そんな思いを抱いてきた2人が昨夏、ともに参加する市民団体「3.11ALL鎌倉実行委員会」のイベントを通じて、動画を発信することで意気投合。今月7日のイベントでは「防災の未来を私たち中高生と一緒に作っていきませんか」と松尾崇市長に呼び掛けた。

 2人の名前から取り「限界突破を目指す」と思いを込めた「玄海」の活動は始まったばかり。同世代を七里ガ浜の海に集め津波避難を考える企画や、企業と一緒に防災展を開くことも予定している。

 動画は投稿サイト「ユーチューブ」で「玄海Official」で検索。

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