【解説】変化待望、知名度生かす 諫早市長選

 実績のある現職と元国土交通省職員の新人を相手に、三つどもえの戦いを制したのは、知名度が高い元参院議員の大久保潔重氏だった。3期12年の宮本市政の「継承か刷新か」の対立軸でみると、市民が「安定」より「変化」を選択したといえる。長期政権に加え、コロナ禍で疲弊した地域の閉塞(へいそく)感を打ち破ろうとする市民の期待感が、諫早市に大きな転換点を生み出した。
 宮本市政に「大きな失点はない」と評する一方、漠然とした物足りなさを指摘する声も。山村氏は市民との対話を重視し、「10年後、人口1万人増」を実現させるための政策を掲げ、変化を訴えた。
 これに対し、同市出身の大久保氏は、2005年に合併した旧5町を中心とした衰退に対する不満を丹念に拾い上げた。農林水産業や工業などが発達した市の総生産増や市民所得の向上を示し、支持を伸ばした。
 一方、過去の市長選での対立を地域内でひきずっている側面があり、今回も激戦のしこりが懸念されるが、“ノーサイド”で新しいスタートを切ってほしい。
 18年間の政治経験を持つ大久保氏だが、市政運営の実行力はある意味、未知数。リーダーの資質について、こう語った大久保氏。「対話の中から難しい判断や必要な政策を決定する」。その真価が問われるのはこれからだ。


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