交わす言葉は温かく

 2年に1回、国民に同じ質問をして暮らしや関心の向きがどう変わったか探る。博報堂生活総合研究所はそんな「生活定点」調査を長いこと続けている。昨年の調査結果から、今の世の中がうっすらと見えてくる▲過去最高になった項目がいくつかある。その中でもとりわけ残念と言うべきか、案の定と言うべきか、「世の中のことで気掛かりなことや不安なことが多い」のは77.7%に上り、前回からぐんと跳ね上がった▲首都圏でより高く、50歳代が他の層よりも高いという。今年は調査の年ではないのだが、いま国民に同じことを聞けば、折れ線グラフはさらに右肩上がりかもしれない▲大都市を中心に「感染の再拡大」とも「第4波に入った」ともいわれる。列島全体、春らんまんの陽気に包まれているところへ「要警戒」の肌寒い空気が流れ込んでいる▲ある人は、今いる場所、周りの人に別れを告げる。ある人は新生活が幕を開け、社会への第一歩を踏み出す。お元気で。ありがとう。どうぞよろしく。別れと出会いが交差するこの季節、交わす言葉は温かであってほしいと、肌寒い空気に触れつつ思う▲大したことはできないが、願いを込めて本欄の黒い三角を横一列に並べてみた。気掛かり、不安が右肩上がりになりませんよう。平らかな世になりますよう。(徹)

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