早見優「夏色のナンシー」1983年における極上のアイドルポップス夏の陣! 1983年 4月1日 早見優のシングル「夏色のナンシー」がリリースされた日

桜咲く頃にリリースされた夏ソング「夏色のナンシー」

通常、季節を先取りするのが慣わしのアイドルソングとはいえ、真夏の歌が桜咲く頃のリリースというのは、ずいぶん早かったのだなと改めて想う。

1983年4月1日、早見優の通算5枚目のシングル「夏色のナンシー」が発売された。小麦色の肌で、もともと夏のイメージが強い彼女にとっての代表作になるかもしれないという予感は発売前からあった。いや、後からならなんとでも言えるだろうと思われてしまいそうだが、当時、新譜情報で初めてタイトルを聞いた時、本当にそんな予感がしたのだ。発売前にラジオで逸早くかかった曲を聴いて、その予感は確信に変わった。

いつも以上の季節の先取りは、コカ・コーラのCMソングということで、広告代理店も絡んだ盤石なプロジェクトが早くから進んでいたためだろう。CMはマッキャンエリクソン博報堂が代理店で、左川康之のディレクションによるものだった。早見自身が水着姿で海辺を駆け抜ける眩いばかりの映像に乗せてショートヴァージョンの「夏色のナンシー」が流れる。ACC CMフェスティバルにおいて「第23回CM音楽部門秀作賞」を受賞している。

三浦徳子×筒美京平×茂木由多加の極上のエレクトロポップ

アイドルサマーソングのツボを心得た筒美京平の完璧なメロディだが、早見優への曲提供はこの時がはじめてだった。キャッチーで躍動感に満ちた三浦徳子の詞、そして茂木由多加のキラキラしたアレンジを得て生まれた極上のエレクトロポップ。この時期量産されていたテクノ歌謡の中でも特筆すべき傑作となった。

茂木はごく短い期間ながらも四人囃子に在籍してキーボードを担当していた人物。この手腕が買われて、以降のシングル「渚のライオン」や「抱いてマイ・ラブ」なども手がけてゆく。同じ作家陣によるカップリング曲「可愛いサマータイム」は、「夏色のナンシー」のような派手さはないけれども、夏の日の午後の微睡みが表現された、ミディアムスローの心地よいナンバーである。

アイドルポップス1983年夏の陣、早見優と小泉今日子と松田聖子の共通点

面白いのは、早見優への曲提供はこの時が初めてだった筒美京平が、ほぼ同時期に小泉今日子への初提供曲「まっ赤な女の子」を書いていること。髪をショートした大胆なイメージチェンジが行われた際の勝負曲。早見と小泉は1982年デビューの同期であり、共に5枚目のシングルという同じタイミングで筒美から初の楽曲提供を受けたことになる。しかも翌1984年にかけて、どちらも5枚のシングルを筒美が担当している。

共通点はそれだけでない。「まっ赤な女の子」の編曲は、四人囃子のベーシストで茂木由多加とは古くからのバンド仲間の佐久間正英だった。多忙を極めたこともあってか、作曲作品のアレンジを自ら手がける機会が極端に少なくなっていた筒美なりの様々な思惑が、この時の采配に大きく作用していたはず。

アイドルポップス1983年夏の陣は、「夏色のナンシー」と「まっ赤な女の子」のダブル筒美作品が中核を担ったのである。その時の大将が松田聖子の「天国のキッス」だったことも付け加えておきたい。松田は早見と同じ事務所、サンミュージックの先輩でもあった。

快心のヒット「夏色のナンシー」、氣志團もロックアレンジでカバー

快心のヒットとなった「夏色のナンシー」は、TBSの歌番組『ザ・ベストテン』にもランクインしている。リリースから約1ヶ月後の5月5日に5位で初登場の後、最高4位を記録し、6週間にわたるランクインだった。ほか、フジテレビ『夜のヒットスタジオ』出演時にも着ていた白地に緑ドット柄のミニの衣装が印象的で、80年代アイドルの歌衣装で誰もが真っ先に思い浮かべる一着に違いない。

ハワイ育ちのバイリンガルとして、新しい時代のアイドル像を示した早見優の代表作「夏色のナンシー」は、最近でも早見自身がCMで替え唄を歌ったり、現役アイドルの寺嶋由芙がカヴァーするなど、アイドルソングのスタンダードとしてすっかり定着した。最も新しいところでは、氣志團による筒美京平カヴァーアルバムにロックアレンジで収められている。

ちなみに早見優がハワイで過ごしたのは7歳から14歳までで、その前の4年間はグアム、そして生まれてから3歳まで暮らした出身地が静岡県熱海市であることは、ちょっとしたアイドル好きにはよく知られていること。「夏色のナンシー」を形成する何分の1かには、風光明媚なリゾート地・熱海の要素が含まれているのだ。

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