【The インタビュー~本音を激白~(24)】注目を集めるサッカー界のユーチューブ事情とは――。J1横浜Mや浦和、神戸などで活躍した元Jリーガーで現在はユーチューバーとして話題の那須大亮氏(39)が連載「The インタビュー」第24回に登場。サッカー界の先駆者として、動画制作の舞台裏や気になる収入事情を明かし“サッカーユーチューバー”の可能性について語ってくれた。
――ユーチューブを始めたきっかけは
那須氏(以下那須)神戸に入団したタイミングでユーチューブに出合い、媒体を利用してサッカー界に還元できればと思い立った。
――当時の反響は
那須 賛同してくれる選手もいたけど、まだユーチューブが軽視される風潮があったので、選手やクラブから信頼が得られていなくて批判的な見方も多くあった。
――成功の経緯は
那須 始めて1年くらいは登録者数が1万から2万くらい。週1回くらいの投稿だったが、引退する2019年の10月くらいから毎日投稿するようになった。コンテンツもサッカーの軸からブレないままエンタメを加える形にした。それからサッカー層に認知してもらいコンテンツの信頼度が高まり、その年中に10万人を超えた。
――元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(36=神戸)や同ダビド・ビジャ氏(39)も登場する
那須 アンドレスにお願いしたら快く「いいよ」とやっていただいて。ビジャは自分でもユーチューブをやっていて向こうから「撮ろうぜ」と言ってくれた。引退後も交流は続いている。
――Jリーガーの恋愛事情など斬新な企画も
那須 ユーチューブ界ではサッカーよりも上にエンタメ系があってスポーツも野球や格闘技が注目される。サッカーがそのレベルに行くためには、いろんな角度での情報発信が必要。各個人がやっている事業や副業などにも価値を持たせることも大事なので、自分の媒体を使って発信していただければありがたい。
――動画のアイデアはどのように出すのか
那須 チームはあって企画会議もやるけど、最近は僕がパッと思い浮かんだものをチームで共有してキャスティングしていくという形。
――参考にしているユーチューバーは
那須 サッカー系のいろいろなコンテンツも見ているけど、トップ層だとトークスキルはカジサックさん(お笑い芸人の梶原雄太=40)がすごい。場の盛り上げ方とか相手の引き出し方とか。僕も気持ちよく話してもらいたい思いがあるので、声のトーンや間は参考にさせてもらっている。
――収入が気になる
那須 トップ層は月収で高級外車を買えるという話はあるけど、僕くらいだと、生活はできるし、チームも編成できるけど企画は経費がものすごくかかるのでまだ儲かるレベルではない。ざっくり言うと、登録者数にゼロ1個を付けた数字が月収とよく言われていたけど、今ユーチューブは新型コロナ禍で広告単価もだいぶ落ちた。プロがどんどん参入してかなり分散している。おそらく当時言われていた数字の半分以下になっている。
――サッカー界ではMF本田圭佑(34=ネフチ・バクー)やDF長友佑都(34=マルセイユ)も登録者数が多い
那須 本田選手は事業をマッチングさせて自分のブランディングの中でつくり上げて活用している。佑都はトップ層とのコラボをしたり、家族コンテンツがかなりバズるのが強み。奥様も著名人(タレントの平愛梨=36)なので見たくなるなと。いろんなファン層を取り込んでユーチューブでサッカー界のスタンダードが100万人くらいになれば。彼らはライバルというより高いステージで一緒にコラボする、一緒に戦う仲間という認識ではある。
――今後ユーチューブで成功しそうな選手
那須 DF槙野智章選手(33=浦和)はおもしろい。かなり“企画脳”があってユーチューブ向き。物の見方が全然違う。彼はキャリアがあって普段からエンタメ性も出しているし、選手としてもしっかり現役でやっている。彼はこれからかなり注目されると思う。
――今後の可能性は
那須 今、クラブや選手個人でもやるようになっている。でもまだ成長途上でフルに活用できていない。動画コンテンツを増やし、人気につなげて(市場を)拡大させたい。チームとコラボしたり、選手のプライベートを引き出して視聴者に流れてきてもらうとか、そういう形ができればと考えている。地道な作業をコツコツやってトライアンドエラーは僕がすればいいかなと。いろんな形を試して、いい流れをつくっていきたい。
近年は有名アスリートが次々とユーチューブに参入し“戦国時代”となっている。日本のサッカー界における公式チャンネルの登録者数は、那須氏が27万2000人と多くの視聴者を獲得。長友が24万3000人、本田は23万1000人と長年日本代表を支えてきたスター選手が続いている。一方、現役Jリーガーでは槙野が4万人、MF宇佐美貴史(28=G大阪)が1万8000人と思うように登録者数を伸ばせていないのが実情だ。海外選手に目を向けると、ブラジル代表FWネイマール(29=パリ・サンジェルマン)が256万人と圧倒的な支持を得ているが、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(33=バルセロナ)は107万人。他のスポーツでは、格闘技界で朝倉未来(28)が175万人、野球界でダルビッシュ有投手(34=パドレス)が57万1000人の登録者数を獲得している。
☆なす・だいすけ 1981年10月10日生まれ。鹿児島県出身。鹿児島実業高から進学した駒沢大学3年生の2002年に横浜M入りし、J1連覇に貢献。04年アテネ五輪代表でキャプテンを務めた。08年に東京Vに移籍し、その後、磐田、柏、浦和でプレー。18年に神戸入りし、19年シーズン後に現役を引退した。現在は選手時代から活動しているユーチューバーとしても活躍。登録者は27万2000人。180センチ、77キロ。