佐藤輝は7番&スタメン落ちならベンチで“勉強” 本紙評論家・伊勢孝夫氏が語る育成法

ももクロポーズでベンチを盛り上げる佐藤輝

【新IDアナライザー 伊勢孝夫】阪神のドラフト1位・佐藤輝明内野手(22)が4日の中日戦(京セラドーム)で初のスタメン落ち。矢野監督はコンディション不良等ではないと前置きした上で「理由は一つではない。チーム全てのことを考えた上での判断」と説明するにとどめた。ここまで9試合に出場し打率1割2分9厘と“プロの壁”に直面する規格外ルーキーを矢野阪神は今後どう起用・育成していくべきか。ヤクルト、近鉄などで長くコーチ業を務めてきた本紙評論家・伊勢孝夫氏の見解は――。

オープン戦等で収集されたデータが本格的にフィードバックされる公式戦で、佐藤輝が打てなくなるのは当然のこと。全てのルーキーが、いつかは必ず直面することになる“壁”が思ったより早く来たな、というのが私の率直な見解だ。

しかし、いくら数字が上がらないからといってファームに落としては意味がない。彼が克服しなければならないのは一軍のピッチャーたちの球威、制球、変化球、配球だ。当面はこの日のように相手投手との相性も考慮しながら陽川、あるいは糸井らと併用して使っていけばいいと思っている。

この日の中日戦では6回二死満塁の好機で代打として起用(結果は右飛)されたが、彼は「当てにいく」ような打者ではないし、一打席勝負の代打には向いていない。あくまでも試合開始から4つ以上打席に立たせてこその選手だ。スタメンを外れた日は休養の意味合いも含め、ベンチで野球を見させておけばいい。

やはり心配なのはコンディションの維持と負傷のリスクだろうか。私の師匠でもある元西鉄の中西太さんがまさにそうだったのだが、佐藤輝のような高出力のフルスイングバッターは腱鞘炎等で手首を痛めやすい。特に体力の低下しがちな夏などは下半身の力が弱まり、上体任せのフォームに陥りやすく、手首への負荷が増えてしまう。大事なのは手首を「無理に返す」打撃フォームにせぬことだ。現状の彼のフォームを見る限り、大丈夫だとは思う。

開幕から6番での起用が続いてきたが、現代野球では6番の打順で好機がよく回ってくる。重圧を少しでも和らげてやるため、7番まで打順を落としてやるのも手だろう。

ファンも含め、外野がやかましい阪神という環境は誰にとっても酷だ。だが幸い阪神は開幕以降、チーム状態がいい。今のうちに少しでも多く打席に立たせてやり現状打破のきっかけをつかんでほしい。

素材としての魅力は誰もが知るところ。いずれ必ずチームを背負わなければならぬ選手だ。無事に大きく育っていってほしいと願っている。

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