【桜花賞】白毛伝説第2章!ソダシ劇的進化 今浪厩務員「あいつと似てきて大変やねん…」

今浪厩務員はソダシの劇的な進化を肌で感じている

白毛伝説第2章が幕を開ける――。2021年春のクラシック開幕戦は3歳牝馬による第81回桜花賞(11日=阪神競馬場・芝外1600メートル)。4戦4勝でJRA賞最優秀2歳牝馬に輝いたソダシ(須貝尚介厩舎)が不動の主役だが、いまや単なるアイドルではない。厩舎の偉大な先輩でGⅠ6勝の芦毛馬ゴールドシップに「とにかく似てきた」との気になる声も…。かれんな白い妖精はいったいどのように変貌しつつあるのだろうか?

昨年の阪神ジュベナイルフィリーズで白毛馬初となるJRA・GⅠを制覇したソダシ。阪神JF優勝直後にはネットの検索サイトで「ソダシ」がトレンド1位を飾るなど、競馬ファンのみならず世間の注目度は高かった。ぶち柄で人気を博したブチコ(注1)の子供とあって、当初は人気先行のアイドルホース的な存在だったが、GⅠを制したことで実力も兼ね備えたスーパーホースへ。競馬の枠を超えて、多くの人たちの心をつかんでいる。

放牧先から2月10日に栗東トレセンへ帰厩。須貝厩舎の調整パターンではレース1か月前の帰厩が多いが、発馬練習を含めて時間をかけて調整するための措置。母ブチコはゲート難で引退を余儀なくされただけに、少しでも気になる点は早めに改善したい、という陣営の意図が感じられる。

「週1回ゲートの練習をしているけど、日に日に良くなっている。3週前の練習はゲート内でおとなしくて、長く中にいても問題なかった。(主戦の吉田)隼人がうまくコンタクトを取ってくれているので今回は不安なく臨める」。担当の今浪隆利厩務員(62)は安堵の表情を浮かべる。

昨年のデアリングタクトに続いて無敗での桜花賞制覇、そして無敗での牝馬3冠へ…。過度なプレッシャーと闘う同厩務員だが「調教前の運動の雰囲気があいつと似てきて大変やねん…」とポツリ。自身が手掛けたゴールドシップ(注2)を引き合いに出すくらい、調教前の気合が「すさまじくなっている」とのこと。ソダシは厩舎の大先輩の背中を追うように、日に日に“迫力”を増してきたそうだ。

ゴールドシップはとにかく我が強かった。周りに馬がいると嫌がって何度も立ち上がり、今浪厩務員を振り落とそうとした姿は何度も見た。さすがにソダシは大きく立ち上がったりはしないが、調教前の運動からうるさく、今浪厩務員はなだめるのに大汗をかいている。

「トモの張りを見ればわかるけど、丸みを帯びているとかじゃなくて四角いねん。普通の牝馬とはまるで違う。さすがにゴールドシップほどではないけど、引き手を引っ張る時のパワーもかなり強くなってきた。ゴールドシップは馬場で乗っているとガスが抜けてオンオフがはっきりする賢い馬だったが、ソダシも調教したらおとなしくなる。そこも似てるな」

なぜか名馬の行動をなぞるように“ゴールドシップ化”するソダシ。それを如実に物語ったのが1週前(3月31日)の坂路での追い切り。前の2頭を見る形で進み、残り1ハロン標識手前で吉田隼が仕掛けると、一気に抜き去ってラスト1ハロンは11・8秒(4ハロン52・4秒)。ゴール前はド迫力の加速だった。3歳春の時点で、ゴールドシップの豪快な走りをほうふつさせるほどの進化を遂げている。

「すごかったな。パワーアップは歴然で、こちらが思っている以上に理想的な形でここまで調整ができている」と須貝調教師。デビュー2戦でタフな洋芝を経験し、阪神JFでは高速馬場にも対応した。中間は陣営も驚く成長曲線。唯一の懸念材料だったゲートも、中間の練習で改善OKなら桜花賞は何一つ不安のない状況で出走できそう。

「ファンから、応援の手紙やお守りをたくさんもらっている。競馬ファン以外の人にもすごく注目してもらっているし、正直なところ負けられないというプレッシャーはある。でもソダシ自身はへこたれることもなく、さらに力強さが出てきた感じだからね。とにかくこのまま無事にレースを迎えられれば」と今浪厩務員。ファンの熱い思いを胸にこの一戦に臨む。

昨年のジャパンCを制して引退したGⅠ9勝馬アーモンドアイ、宝塚記念&有馬記念を制覇したクロノジェネシスなど、今や時代は牝馬。アイドルホースから白毛の歴史的ヒロインへ――。ソダシはその進化した姿を桜花賞で見せつけて、新たな時代の到来を告げることだろう。

注1 母シラユキヒメ、半姉ユキチャン(重賞3勝)も白毛馬。白毛の馬は全身真っ白な馬が多いが、その中でぶち模様は極めてまれだった。JRAで4勝したが、ゲート難で引退。

注2 説明不要かもしれないが、日本ダービーは5着に敗れたものの、皐月賞、菊花賞を制覇。ほかに12年有馬記念、13&14年宝塚記念、15年天皇賞・春を優勝した歴史的名馬。引退後は種牡馬としてビッグレッドファームで供用されている。

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