松山英樹は悲願達成なるか マスターズを見続けてきた男・芹沢信雄「十分に可能性ある」

パトロンが戻ったオーガスタで選手は練習ラウンドを行った(ロイター)

ゴルフの海外メジャー「マスターズ」(8日開幕、ジョージア州オーガスタ・ナショナルGC)が4月に戻ってきた。新型コロナウイルスの影響で異例の11月開催となった昨年、松山英樹(29=LEXUS)は初日、2日目と60台を並べたものの、決勝ラウンドではスコアを伸ばせず13位フィニッシュ。8年連続10度目の出場となる日本のエースは今年こそ悲願達成なるか? 長年、日本の「マスターズ」中継に携わる芹沢信雄(61=TSIグルーヴアンドスポーツ)が占う。

昨年は無観客で行われた「ゴルフの祭典」が今年は一歩前進し、少数のパトロンを入れて開催される。間隔は半年弱。芹沢によれば前回、好成績を残した選手にとってはこれが大きなプラス材料になるという。

「季節が違うとはいえ、いいイメージがより鮮明に残っていると思います。1年と半年は大きな違い。松山選手はもともとオーガスタと相性がいいですし、昨年は2日続けて68を出しているので、例年以上にいいイメージを持って臨めるでしょう」

そんななか、気になるのは松山の状態。今年に入ってからはトップ10入りがなく、予選落ちが2回。2週前の世界選手権シリーズ「デル・マッチプレー」もグループリーグで早々に敗退し、直前の「バレロ・テキサスオープン」も30位に終わった。深刻な不振ではないにしても上位でプレーできていないのは確かだ。

「すべてがかみ合っていない感じではありますね。流れがいい時というのは状態はそれほど変わらなくても、ポンッとスコアが出て、そこから良くなったりするものですが、なかなかそのきっかけがつかめていないように見えます」

そのきっかけにしたいのがオーガスタ。「相性のいいコースに戻ると、イメージが良くなったりするもの。オーガスタの攻め方に合わせて、自然に体が動くというところもあると思います」。半年ぶりでいいイメージが残っていることはその点でもプラス材料になる。

また、今年の松山の大きな変化はチームに河本結(22=リコー)らを指導している目沢秀憲コーチ(30)を迎えたこと。「プレーを見ている限り、コーチがついてスイングを大きく変えたということはないと思います。2人がどんなやりとりをしているのか分かりませんが、頑固で完璧主義者の松山選手のコーチは大変でしょうね(笑い)」

芹沢が冗談めかして、こう話すのは自身の経験から。「(弟子の)藤田(寛之)君も40代でメジャーに出るようになって、求めるレベルが上がりました。ゴルフはミスのスポーツなんだから、それぐらいは許容していいんじゃないと思っても、本人は『このミスが出たらダメなんです』って言うんですよ。この感覚を共有するには同じレベルを知らないと無理だと思いましたね」

米ツアーでトップ争いをしてきた松山が求めるレベルはより高いはず。すでにトップ選手を指導する欧米の有名コーチではなく、日本人で同世代の目沢コーチを選んだのには何らかの意図があり、そこには本人たちにしか分からない信頼関係があるのだろう。

「すべてを背負わせるわけではないですけど、日本の男子ゴルフが盛り上がるにはトップである松山選手が『マスターズ』や東京五輪で勝つのが一番。十分にその可能性はあると思っています」。日本のゴルフファンにとっては眠れない週末、そして歓喜の週末を期待したい。

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