2020年度「すし店」の倒産状況

 2020年度(20年4月-21年3月)の「すし店」倒産(負債1,000万円以上)は、32件(前年度比45.4%増)発生した。2015年度以来、5年ぶりの増加で、前年度の1.4倍増で30件台に乗せた。
 すし店は、高級店から家族向けの回転寿司まで客層が幅広い。コロナ禍までは海外の観光客を呼び込んだインバウンド需要にも支えられて好調を持続。「すし店」の倒産は2016年度から4年連続で減少し、2019年度は2000年度以降で最少の22件にとどまった。
 しかし、2020年度は新型コロナ感染拡大で事業環境が一変。インバウンド需要の消失、飲食店への休業・時短要請に加え、外出自粛や企業の接待自粛、在宅勤務の広がりで客足が遠のき、多くのすし店が売上減少の危機に直面した。
 2021年1月、11都府県に緊急事態宣言が再発令されたが、解除後も飲食店への時短営業の要請が継続し、先行きの見えないコロナ禍で厳しい環境が続いている。
 倒産の原因別では、最多が販売不振の31件(前年度比63.1%増)で、「すし店」倒産に占める構成比は96.8%に達した。また、資本金1,000万円未満が29件(構成比90.6%)、負債1億円未満が30件(同93.7%)、従業員10人未満が30件(同93.7%)と、経営体力の乏しい小・零細企業を中心に、倒産は増加傾向にある。
 テイクアウトへの参入や店舗での感染防止対策など、すし店も長期化するコロナ禍への対応を進めている。だが、過小資本の小・零細規模のすし店には、大手と同等の対応は負担が大きい。罰則付きの時短要請も始まり、支援と客足の戻り次第では“あきらめ”倒産の増加も懸念される。

  • ※本調査は、日本産業分類の「飲食業」のなかの、「すし店」の2020年度の倒産を集計、分析した。

2015年度以来、5年ぶりに増加、30件台に乗せる

 2020年度の「すし店」倒産は、32件(前年度比45.4%増)に急増した。2019年度までインバウンド需要拡大などの恩恵も受け、倒産は2016年度から4年連続で減少、2019年度は2000年度以降の20年間で最少の22件にとどまった。
 だが、2020年度は新型コロナ感染拡大に見舞われ、2020年4-6月期は4件(前年同期比20.0%減)、7-9月期は12件(同140.0%増)、稼ぎ時の10-12月期は9件(同80.0%増)と増勢を強めた。緊急事態宣言が再発令された2021年1-3月期は資金繰り支援策や協力金などが奏功し7件(同±0.0%)にとどまった。
 しかし、新型コロナ感染の第4波も危惧され、長引くコロナ禍で小・零細規模の多いすし店には支援策の借入金も過剰債務を招いている可能性が高まっている。

すし

原因別 「販売不振」が9割を占める

 原因別では、最多は「販売不振」の31件(前年度比63.1%増)。すし店倒産の96.8%(前年度86.3%)と9割以上を占め、前年度より10.5ポイント上昇した。長引くコロナ禍で、それまで成長を支えたインバウンド需要消失や外出自粛、休業・時短要請が経営を直撃したことを裏付けた格好となった。このほか、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が1件(前年度ゼロ)だった。

形態別 「破産」が29件、「特別清算」が1件で「消滅型」が9割超

 形態別で、最多は「破産」の29件(前年度比45.0%増)で、構成比は9割(90.6%)を占めた。「特別清算」の1件(前年度同数)と合わせ、消滅型の倒産が93.7%にのぼった。
 一方、再建型の「民事再生法」は個人企業の小規模個人再生が2件(前年度ゼロ)で、構成比は6.2%にとどまった。コロナ禍で個人客対象のすし店では、再建が難しいことを示している。
 資本金別では、個人企業を含む1,000万円未満が29件(構成比90.6%)、負債額別では1億円未満が30件(同93.7%)と、小・零細企業が9割を占めた。第4波も警戒されるなか、外食需要は回復の見通しが立たず、事業継続を断念する小・零細企業・店舗も増えることが懸念される。

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