2020年度 「バー、スナック」の倒産状況

 新型コロナウイルスの感染拡大で、街角のバーや老舗のスナックに淘汰の波が押し寄せている。
 2020年度(20年4月-21年3月)の「バー、スナック」の倒産(負債1,000万円未満を含む)が、75件(前年度比2.7%増)と2年ぶりに増加、4年連続で70件台を記録した。過去10年間では2011年度と2018年度(各78件)に次ぐ、3番目の高水準となった。
 ただ、負債1,000万円以上が55件(前年度17.9%減)と減少したのに対し、負債1,000万円未満の小・零細規模では20件(同233.3%増)と大幅に増加、規模による格差が明らかになった。
 小・零細規模のバーやスナックは個人経営が中心で、過小資本で資金余裕が乏しく大型投資も難しい。長年、地域に根ざした「大人の社交場」として愛されてきたが、コロナ禍で営業自粛や時短営業の要請、三密回避の動きが広がった。接客を伴うバーやスナック、クラブの多くが顧客との繋がりが薄れ、客足が遠のいたことで売上が落ち込んだ。
 厳しい経営環境でも、一定規模以上の企業は資金繰り支援策や休業補償、雇用調整助成金の特例措置などで何とか経営を維持している。だが、それより小・零細規模の店舗では、新たな資金調達も一時しのぎにとどまる可能性も高く、事業継続を断念する構図が浮かびあがっている。

  • ※本調査は2020年度(20年4月-21年3月)で、全国で発生した業種細分類「バー,キャバレー,ナイトクラブ」に分類される企業倒産(法的・私的倒産、負債1,000万円未満を含む)を集計した。

負債1,000万円未満の小規模倒産、前年度の3.3倍増

 2020年度の「バー、スナック」の倒産は75件で、前年度の73件から2件(2.7%増)増加した。過去10年間では、4年連続で70件台で推移している。
 75件のうち、形態別では破産が74件(前年度比8.8%増)、個人企業の小規模個人再生が1件(前年度ゼロ)だった。
 負債別では、負債1億円以上が3件(前年度50.0%増)、5千万円以上1億円未満が1件(前年度同数)、1千万円以上5千万円未満が51件(前年度比20.0%減)で、1千万円未満が20件(同233.3%増)だった。
 負債1,000万円未満の倒産は、20件で前年度(6件)から3.3倍に急増、件数を押し上げた。このうち9件が個人企業で、事業継続が難しい小・零細規模の脱落が目立ち、コロナ禍の影響が直撃していることがうかがえる。
 小・零細規模のバーやスナックは、狭い密室空間が多く、三密回避もあって客足が遠ざかった。今後は、休業中の店舗が再開を断念し、債務整理などを進める動きなども懸念され、小規模事業者を中心にバー、スナックの倒産はさらに加速する可能性が強まっている。

バー・スナック

© 株式会社東京商工リサーチ