【MLB】2戦連続QSで進化を示す菊池雄星 先輩・岩隈氏から授かった“立ち姿”の深い意味

敵地でのツインズ戦に先発登板したマリナーズ・菊池雄星【写真:AP】

11日のツインズ戦で6回5安打2失点と好投した菊池

■マリナーズ 4ー3 ツインズ(日本時間11日・ミネソタ)

マリナーズの菊池雄星投手が10日(日本時間11日)、敵地ミネアポリスでのツインズ戦で今季2度目の先発マウンドに上がった。6回を5安打2四球6奪三振2失点と好投したものの、同点で交代となり、勝敗は付かなかった。今季初白星はまたもお預けとなったが、開幕から2戦連続でクオリティスタート(6回以上、自責3以下)とし、投じた94球を「とにかく自分の球を信じて、攻める気持ちを持ちながら、最初から最後まで投げられました」と総括した。

同一カード初戦でエース左腕ゴンザレスから3本塁打を含む9安打を放ち、7点を奪った強力ツインズ打線に菊池の士気は上がっていた。「どうやって勝負をしていくかすごく楽しみだった」。秘策は、前回と変わらず、積極果敢な投球で攻める「ストライク先行」だった。

「昨年は細かいところに投げようとし過ぎて自分でカウントを悪くしてしまうというケースがすごくあった。バッターと勝負ができていない悔いが残る形だったので、今年はキャンプから真ん中でいいから自信を持って自分のボールを投げるんだと割り切って、それを貫いている感じです」

菊池が目指す理想形「真っ直ぐ立つのはすごく難しい」

最速97マイル(約156キロ)の速球とカッターを軸にリズムを作り、そこにスライダーとスプリットを織り交ぜてサービス監督が求めた「6回95球」を見事にクリアした。2日(同3日)のジャイアンツ戦で約75%を記録したストライク率は、今登板では約62%へと下がったものの、この差を不利なカウントからの粘投でカバーできたことは大きな収穫だった。

秀逸だったのは前回より3人増えた5人の打者への“3ボール”からの投球。2つの四球を与えたものの、あとの3人は2奪三振と内野ゴロ併殺で切り抜け、絶対的不利なカウントからの失点を防いだ。3回に通算470本塁打の大砲ネルソン・クルーズに同点2ランを許したが、4回の併殺から最後は8者連続アウトに封じた。防御率をメジャー1年目の2019年5月25日以来となる3点台とし、約2年ぶりに2試合連続のクオリティスタートを記録した。

昨季は、球速を上げる目的で左肘が高く上がる力感あふれるフォームに改造して臨んだが、今季は上げた右足を一度止めてから右足首で蹴る反動を使い上体のブレを抑えたフォームに修正。その一連の投球動作で注視すべき点の一つが、背筋を伸ばした“立ち姿”にある。これには菊池が追い求めた理想形への一端が映っている。

「真っ直ぐ立つのはすごく難しいんです。形はそう見えていても足の裏がどうなっているか、どこに重心があるかは映像じゃ見えない部分もあるので。そういう細かい部分も含めて、オフシーズンでやってきました」

“立ち姿”の重要性を深く知ったのは岩隈久志氏からの言葉

軸足裏が一投を左右する――。本人だけが知るフォーム安定への“メルクマール”。その重要性を深く知り得たのは、今春からマリナーズの特任コーチに就任しキャンプで寄り添った岩隈久志氏からの言葉だった。

「岩隈さんに『タイミングとバランスを1年間通して大事にしていったら絶対にいいことが起きるよ』と言ってもらいました。シーズン中もしっかり反復をしながら、やっていきたいと思います」

受け継いだ背番号「18」を背負っていた先輩からの言葉には深奥な意味が宿っている。2015年に地元シアトルでノーヒッターを達成した岩隈氏は、球速に捉われることなく、安定したフォームから繰り出す質のいい球で相手打者のバットの芯と軌道を外し、日米通算170勝を積み上げた。その岩隈氏が大切にし続けたのも“立ち姿”であった。

菊池はあえて自分を突き放すように言った。

「この2試合はすごくいい形できていますけど、まだまだ僕自身は発展途上。野球がうまくなると思っていますし、うまくなりたいと思っています。そしてもっともっと完成度を上げていけると思っています」

根拠のある自信を胸に、菊池雄星はメジャー3年目をひた走る。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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