東南アジアで最も感染が広がるインドネシア 大統領がみずから“自粛破り”で非難ゴウゴウ

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領(ロイター)

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】超人気ユーチューバーの結婚式に、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領(59)が出席。新型コロナウイルス禍で大変な一国のあるじ自ら“自粛破り”し批判を浴びている。

首都ジャカルタの5つ星ホテル、ラッフルズで今月3日に挙式したのは、チャンネル登録者数2720万人を誇るアッタ・ハリリンター(26)。日本のトップユーチューバーでも登録者数およそ900万人だから、その人気はケタ違いと言えよう。毎月の配信収入はなんと推定160万ドル(約1億7500万円)。式には日本円で約7億4500万円かけたといわれ、テレビの生中継も入った。

アッタはもともと裕福な家庭で育ち、在学中から家業を引き継ぎ食品などの販売を手掛け事業を拡大。5年前、リッチな生活ぶりを動画配信し始めるや、若者のあこがれのライフスタイルだと人気になった。アーティストや作曲家としても活躍し、一昨年には人気ジャニーズグループ「SixTONES」とのコラボ動画も話題に。

新婦はモデル兼歌手アウレル・ヘルマンシャー(22)。その両親が共に、芸能界から政界へ転身したからだろう。式にはセレブや政治家が多数駆け付け、ジョコ大統領もイリアナ夫人同伴で出席した。

若者に絶大な人気のユーチューバーと近い関係をアピールすることで、大統領は若年層の支持を集める狙いだったのではという声もある。だが国民からは「コロナであらゆるイベントが中止になってるのに、金持ちは豪華な結婚パーティーか」などと非難ゴウゴウだ。

東南アジアで最も感染が広がっているのがインドネシア。今年1~2月のピーク時には、感染者が毎日1万人を超えた。今はやや落ち着いてきたとはいえ、ジャカルタでは1日1000人前後の感染が確認されている。

結婚式は一時期禁じられていたが、今は緩和されている。とはいえ出席者は会場の収容人数の4分の1までという決まりだ。なのに政治家やマスコミまで殺到した今回のド派手婚には、識者からも疑問の声が続々。

人気作家兼歌手が「我々は披露宴も開けないのに、有名人の結婚式には国の指導者が出席するのか」とツイートすれば、公衆衛生の専門家は「結婚式に参加する時間があるなら、ワクチンの準備に充てたほうがいいのでは」と大統領をチクリ。国民の間でも論争が広がっている。

日本の政治家や官僚も最近、自粛破りの飲み会が立て続けに発覚し国民をあきれさせたが、インドネシアはその比ではない。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く」(辰巳出版)。

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